研究課題/領域番号 |
26750242
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
水口 暢章 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助手 (80635425)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経修飾法 / 非侵襲的脳刺激 / 運動制御 / 運動学習 / 投動作 |
研究実績の概要 |
運動様式が異なるとその運動のバラツキを生み出す神経メカニズムも異なる可能性がある。しかし、これまでは手指や腕を使った比較的単純な動作は調べられているが、スポーツのような全身運動についてはほとんど調べられていなかった。そこで今年度は経頭蓋直流電気刺激を用いて脳活動を修飾することでダーツのパフォーマンスのバラツキが変化するかを検討した。被験者(24名)はダーツボードの中心(Bull)を狙って10秒間隔で150試行ダーツを投じ、パフォーマンスレベルは中心からの距離によって評価した。経頭蓋直流電気刺激はエラー修正に関連する小脳に行った。刺激は3条件あり、小脳の活動を高めると考えられるanodal刺激、活動を抑制すると考えられるcathodal刺激、コントロールとして刺激効果の無いsham刺激であった。各刺激は別の日に行い、全被験者は3回実験に参加した。各実験の間隔は最低1週間空けて行った。刺激の順序は被験者間でカウンターバランスをとった。その結果、パフォーマンス上位群(中心からの平均距離が小さい被験者)と下位群で刺激の効果が異なることが明らかとなった。つまり、パフォーマンス下位群では小脳の活動を抑制すると考えられるcathodal刺激を行うとsham刺激を行った場合よりもパフォーマンスが高かった。さらに、エラー修正量(1投前との距離)も小さくなる傾向が見られた。一方、パフォーマンス上位群ではcathodal刺激によってパフォーマンスが悪化した。これらのことから、小脳cathodal刺激は、パフォーマンスレベルの低い被験者のパフォーマンスのバラツキを減少させ、そのパフォーマンスレベルを向上させることが示唆された。これらの結果は、非侵襲的脳刺激法によって運動初心者の運動のバラツキを減少させ、運動学習を促進させることができる新しいトレーニング法の可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非侵襲的脳刺激によって全身運動のパフォーマンスのバラツキを低下させ、パフォーマンスを向上させることができたことから当初の目標を達成したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
所属が異動したため、実験系を新しく構築する必要がある。また、実験装置が前所属先と異なるため、以前の実験結果と今後の実験結果を直接比較することが難しいという問題がある。 今後は新しい実験について速やかに倫理委員会の承認を受け、非侵襲的脳刺激の影響と運動様式やパフォーマンスレベルの影響、個人差をより詳細に調べていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画変更により購入予定であった用品を購入しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
新しい実験系の構築に使用する。
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