最終年度は昨年度に行ったデータを詳細に解析し、その研究成果をまとめた。この実験では運動誤差の修正に関わる小脳へ非侵襲的脳刺激法である経頭蓋直流電気刺激を行い、人工的に活動を修飾することで運動パフォーマンスが変化するかを検討した。被験者は健常な24名とし、すべてダーツ未経験者もしくは経験の少ない者であった。被験者はダーツボードの中心(Bull)を狙って10秒間隔で150試行ダーツを投じた。パフォーマンスはダーツボードの中心とダーツが刺さった位置の距離によって評価した。脳刺激は3条件あり、小脳の活動を高めると考えられるanodal刺激、活動を抑制すると考えられるcathodal刺激、コントロールとして刺激効果の無いsham刺激であった。各刺激条件は別の日に行い、全被験者は3回実験に参加した。各実験の間隔は最低1週間空けて行った。刺激の順序は被験者間でカウンターバランスをとった。解析の結果、小脳の活動を抑制するcathodal刺激を行うとダーツパフォーマンスが向上することが示唆された。つまり、バラツキが少なく安定して運動を行えるようになった。さらに、その刺激効果はパフォーマンスレベルが低い被験者に対して顕著であることも示された。この結果は、新たな運動技能を学ぶ際に人工的に小脳の活動を修飾するとその学習が促進することを意味している。したがって、運動が苦手な人のトレーニングやリハビリテーションへ応用が可能であると考えている。この研究成果を日本運動生理学会にて発表し、奨励賞を受賞した。また、現在、この研究成果を論文にまとめている。
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