研究課題/領域番号 |
26750251
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研究機関 | 東京女子体育大学 |
研究代表者 |
佐藤 晋也 東京女子体育大学, 体育学部, 准教授 (90435214)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 促発指導 / 運動学 / 器械運動 / コツ / マット運動 |
研究実績の概要 |
体育指導者にとって、運動課題が「できない」生徒を「できる」ようにさせるための促発指導力は不可欠な専門的能力である。指導者は、生徒や児童の「できない」という現象の本質問題を捉え、それを「できる」ように導くことが最大の任務となる。ただ、その体育指導者は、一般的に比較的運動が得意なものがその職に就いている場合がほとんどであり、そのため学校体育で課題として設定された運動が「できない」という事態と向き合った経験が少ないものが多い。本研究の目的は、そのように一般的な体育教材としての運動課題ができている学生に対して、再び「できない」という問題を経験させるための実技課題を新たに設定し、「できる」ためのコツを身につけていくということを再認識させることがねらいである。 本年度は、特にマット運動における倒立前転や伸膝前転、とび箱運動の開脚とび等をすでに習得している学生を20名程度選出し、運動の外形的特徴のみならず、各々が持っている動感形態の中で、核となる重要なコツがどこにあるのかを交信分析を繰り返すことにより、個別に明らかしていった。これにより、運動課題中のどの部分に制約を与えれば、つまり意図的にコツが使えない状況にさせれば、課題とする技ができなくなるかについていくつかのパターンを挙げながら検証した。また、それぞれを実験的に試行させるとともに、ある一つのコツを消去して実施した際に顕在化された他のコツや、あるいはコツの消去によって生じた運動課題の捉え方について被験者へのインタビューを通して聞き出し、新たな課題を実施した後のコツの理解度がどう変化したかについても併せて記録した。そのような検証を繰り返す中で、コツを再認識させるために効果的な課題設定の仕方について示唆を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、当初の計画通り、マット運動及びとび箱運動における基本技の習得者を対象として、それぞれの動感形態において核となる感覚上のポイント(コツ)を消去した場合に生じた運動経過と動感意識の変化について、ビデオ撮影及びインタビューを通した観察・交信分析により明らかにすることができた。なお、26年度に実施しなかった他の種目や技についても、27年度以降継続して検証していく予定である。 また、今年度得られた知見を、指導者養成を目的とした実技実習のプログラムの中でどのように取り入れていくかについても検証し、筆者が担当する「器械運動運動方法及び実習」という講義の中で現在すでに展開しているところである。次年度以降に予定している論文化のための基礎資料の収集ができたこと、及び一定の知見が得られたことにより、概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、これまで考案された新たな実技実習課題への取り組みが、促発身体知にどのように結びつくのかということを検討することとなる。促発指導力については、ただ個々の技のポイントを理解しておくだけではなく、我々人間が運動を習得していくということの本質的な理解や、運動が「できない」という問題を外部視点だけに頼らずに捉える力など、多面的なものとして捉える必要がある。そのため、今年度からは器械運動の技を個別に取り上げるだけではなく、促発指導力の構造についての理論をまとめていくことが課題である。
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