研究課題/領域番号 |
26750262
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
成瀬 和弥 筑波大学, 体育系, 助教 (80400703)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生涯スポーツ / 政策過程 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究実施計画に基づき、主として、以下のような研究を行った。 1.文部省生涯スポーツ課・競技スポーツ課の設置に関して、当時の文部省関係者に聞き取り調査を行い、当時の政策資料の提供を受けるとともに、1989年の文部省機構改革に伴う、生涯スポーツ課と競技スポーツ課の設置の経緯について情報を得た。当時のスポーツ課が廃止され、生涯スポーツ課と競技スポーツ課が設置された背景としては、日本経済の発展に伴う、余暇時間の増大や労働時間の減少等があり、このような状況を裏付ける世論調査結果が公表された。この点に関して、文部省だけでなく、厚生省、通産省等の省庁が、政策化に動き、この流れの中で、生涯スポーツ課と競技スポーツ課が設置されたことが推察できる。 2.本研究の研究枠組みであるキングダンの政策の窓モデルに関して、引き続き理論研究を行った。特に、政策アジェンダに関して、キングダンの定義を踏まえながら、政策アジェンダの概念について考察した。 3.戦後日本のスポーツ政策の変遷を明らかにするために、保健体育審議会等が提出した答申等を収集し、通読した。保健体育審議会の答申で生涯体育という言葉が確認できるのは、1972年12月10日に提出された「体育・スポーツの普及振興に関する基本方策について」(答申)であり、1989年11月21日に保健体育審議会が提出した「21世紀に向けたスポーツの振興方策について」(答申)において、生涯スポーツという言葉が確認することができることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究計画は、第一に、保健体育審議会および中央教育審議会ならびに臨時教育審議会が提出した答申等、学制100年史、文部・文部科学白書、官報および全国紙(読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞)の新聞記事、国会議事録等から、生涯スポーツ課と競技スポーツ課の設置に関する資料を収集することである。第二に、政策関係者である笠原一也氏(現に日本オリンピック・アカデミー会長)にインタビューすることである。 第一の課題に関しては、保健体育審議会等の答申等の収集は終了し、収集した全資料の分析はほぼ完了した。国会議事録(衆議院および参議院)の議事録の調査も完了した。学制100年史および文部・文部科学白書、官報および全国紙記事の調査は継続中である。 第二の課題に関しては、笠原一也氏に聞き取り調査をするとともに、1989年の文部省生涯スポーツ課・競技スポーツ課の設置の際に、文部省スポーツ課の職員として現場で従事した、元文部省競技スポーツ課長をつとめた小山内優氏(現創価大学教授)にも聞き取り調査を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究計画では、これまでの研究成果(平成26・27年度)をまとめるとともに、研究に遅れが生じた場合のための研究を補う期間に当てている。第一に、平成27年度から調査が継続中である学制100年史および文部・文部科学白書、官報および全国紙記事の調査を継続する。第二に、聞き取り調査で入手することができた資料(内部文書)の分析を進める。また、分析の際に、必要に応じて、笠原一也氏および小山内優氏に、さらに聞き取り調査を依頼する。本人からは、調査の継続に関して承諾を得ている。第三に、本研究の研究枠組みであるキングダンの政策の窓モデルに関して、これまで蓄積した理論研究を元に、本研究に当てはめ、分析を試みる。政策の窓モデルは、「問題の流れ」「政策の流れ」「政治の流れ」がある時期に合流(カップリング)し、政策の窓が開くことによって、その政策が、政策化されるという理論である。これには政策事業家といわれる関係者が深く関与している。文部省に生涯スポーツ課と競技スポーツ課が設置されることをカップリングと捉え、これまでの研究の成果をそれぞれにシステム(流れ)に当てはめ、分析を試みる。 本研究で得られた成果は、2016年12月に開催される日本体育・スポーツ政策学会(会場、神戸親和女子大学)において研究報告するとともに、論文にまとめ、日本体育・スポーツ政策研究に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、発表予定の学会が東京都内で開催されたため、旅費が想定よりもかからなかったことと、これまでに収集した資料は紙媒体中心で保管しており、電子データとして保存するための機器を購入していないためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、大阪府で開催される日本体育学会および兵庫県で開催される日本体育・スポーツ政策学会に参加し、情報収集をするとともに成果発表のために、旅費として使用する。また、これまでに収集した資料を保存するためのスキャナなどデジタル保存できる機器の購入に充てる予定である。
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