日本のスポーツ政策はこれまで、「生涯スポーツ」と「競技スポーツ」という2つの項目を軸に展開されてきた。そのような中で、近年、国のスポーツ予算は増加する一方で、国のスポーツ政策において生涯スポーツという用語が使用されなくなってきていることが指摘できる。スポーツ庁の設置も伴い、本研究では、1989年の文部省の機構改革により、体育局に「生涯スポーツ課」と「競技スポーツ課」が設置された経緯を明らかにすることを目的とした。具体的には、1.同課の設置の際に、どのような問題が認識され、2.どのようにして政策が特定化されたかを考究することを課題とした。 平成26年度では、研究方法論を確定し、キングダンの政策の窓モデルを援用することとした。合わせて、議事録等の行政資料を収集した。平成27年度では、同課設置当時に生涯スポーツ課長補佐であった笠原一也氏と同課の職員であり、のちに競技スポーツ課長を勤めた小山内優氏に聞き取り調査を行った。笠原氏からは、同課の設置に伴い、大蔵省(当時)等への説明資料として作成した生涯スポーツに関する定義等を行った内部資料の提供を受けた。 これらを踏まえて、平成28年度では、これまでに収集した資料の分析を進め、考察を行った。その結果、生涯スポーツ課と競技スポーツ課の設置に際して、第4次全国総合開発計画の策定、余暇時間の増大、世論調査から明らかとなった国民のスポーツに対する要望の変化等の要因が複合的に関連し、政策化されていったことが推察された。
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