本研究課題では、視野空間内における注視位置の移動の際に、利き目が非利き目に比べて安定した動的特性を示すかという問題や、視野空間内で注視位置の維持を行う際においても、利き目が非利き目に比べて安定した特性を示すかという問題に関し、各種スポーツ競技選手の両眼注視における動的特性および注視安定性を詳細に調べ、運動技能レベルとの関連について検討し、さらにそのトレーニング効果を検証することを目的とした。 大学生バスケットボール選手12名を対象に、3か月間にわたり測定したスリーポイントシュートのパフォーマンステストを用い、両眼眼球運動特性および奥行き方向への注視に関するトレーニングがシュート成功率に関連するか検討した。その結果、奥行き方向に注視を移動させるときに非利き目(左目)の潜時が利き目(右目)の潜時よりも長いという結果に加え、シュート成功率が高い選手は、非利き目の潜時が短いという関係がみられた。本研究の結果から、非利き目の注視を素早く移動させることがシュートパフォーマンスの向上に貢献する可能性が示唆された。 また平成28年度は、実際にボールを扱う運動課題を行う際の両眼眼球運動の特性を検討した。バレーボール選手8名を実験参加者とし、ボールを用いた対人パス課題を行った。静止状態およびパス課題中のプレーヤーの両眼眼球運動を測定し、水平、垂直、奥行き方向の両眼注視移動および瞬目行動を分析した。その結果、プレー中は平常時に比べ瞬目頻度が低下したことに加え、パスしたボールの追従を行う際に、静止状態での奥行き方向の注視移動時に比べて、両眼がより対称的にボールを追従していることが観察された。実際のボールを用いた運動を伴う課題における注視移動において、静止状態で注視移動のみを行う場合に比べて、奥行き方向への注視移動がよりスムーズに行われることが示唆された。
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