研究課題/領域番号 |
26750265
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
長谷川 弓子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (20712871)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 離散運動 / スキル / 知覚 / 計画・準備 / パフォーマンス / ファインモーターコントロール |
研究実績の概要 |
昨年度の2~3月に実施した実験のデータ分析を実施、2件の学会発表を行った。この実験の結果は現在、投稿準備中である。 本研究は、ゴルフのパッティング課題を用いて、高水準の技能を有するプロ選手とハイレベルアマチュア選手を対象に、それら2群の環境に対する知覚がどのように異なるかを明らかにすることを試みている。昨年度までの実験により、すでにこれら2群のクラブヘッド制御の解像度には明確な違いがあることは分かっている。 本研究の結果により、プロ選手とハイレベルアマチュア選手の標的までの顕在的な距離認識には明確な差が認められないものの、ハイレベルアマチュア選手の距離認知は、物理的距離をややオーバーエスティメイトする傾向がみられた。また、運動前の準備段階においては、その後の実際のプレーを忠実にシミュレートする選手がいる一方で、高い技術をもつ選手であっても実行段階とは全く異なる振る舞いが見られるケースがあり、各人によって準備段階における振る舞いが異なることが明らかとなった。詳細は現在検討中である。これまでの実験により、環境に対する認識について、高水準の2群間においては距離認識を測定しても両者を区別することが困難であることが明らかとなり、その後に行われる振る舞いに着目していくことが重要であることが分かった。 今後、行為者の運動計画が表出すると考えられる準備段階での振る舞いに着目し明らかにしていくことは、離散技能における運動学習の介入方法の考案に寄与できる可能性がある。また「直感的に分かる」といった人の高度な認知の解明にも寄与できる可能性もある。ハイレベルな選手がさらに技能を向上させていくための要因を探す試みは、他の運動技能にも応用可能であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画当初に予定していたプレッシャー実験を実施できていないためやや遅れている。高水準の2群間においては、環境に対する顕在的認識には明確な違いを見つけられないことが明らかとなった。そこで、行為者の環境に対する認識を実際の実行局面の前段階である準備局面から明らかにしようと試みているが、予想していたよりもその様態がさまざまで個人差がある。プレッシャー下での行為者の環境に対する知覚について明らかにするためには、事前の準備局面に着目していくことが必要であることまでは分かったが、どのようなパラメータに着目していけばよいか明確となっていないためである。
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今後の研究の推進方策 |
実施計画の一部変更をし、プレッシャー実験を行わず、準備局面における参加者の方略を明らかにしていくための実験を実施する予定である。これにより、プレッシャー実験における着目すべきパラメータの明確化をはかることができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での研究発表を実施しなかったこと及びプレッシャー実験を実施しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験を実施し謝金等を支払う他、予定していた実験機材を購入する。
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