本研究では、当初は投球に対する座位姿勢の影響を分析することを計画していたが、研究を進めていく上で、選手の競技歴、投球に影響を及ぼしていると考えられる選手自身の障がいなどが多種多様であり、統一した見解を得ることは容易でないことがわかった。そこで、ボッチャの中でも「ランプ」という補装具を利用し、アシスタントに指示を出してボールを転がすことで競技に参加するBC3クラスの選手のパフォーマンスに座位姿勢が与える影響について最終年度に評価した。 健常者17名を対象に車椅子に座った状態で、正面5mの距離にあるターゲットに対し、ランプの方向を調整させた。座位姿勢は安静座位、側方傾斜がついた座面上での座位、側方傾斜がついた座面上で姿勢を正中位に戻した座位の3通りで検証し、座圧分析装置を用い、ランプ位置による座圧の変化についても分析した。結果、ランプの位置が正面から離れていくほど座圧中心が変位する傾向にあり、自分の正面から遠くランプが離れていくほど精度は低下し、座位を正中位に修正できる方が精度が高まる傾向にあった。 また、一症例のみであるが、下肢の筋緊張が高く、投球時に殿部が車椅子から浮いてしまう(競技規則では反則になる)選手に対し、座圧分布装置にて確認しながら、補装具などを用いて投球動作を改善させることも試みた。フットレストに足底の前方を乗せた状態で投球すると、伸展パターンが強調され、殿部が持ち上がってしまうことがわかったため、足底の中央から後方をフットレストに乗せるように調整した。その際、本来は下肢がフットレストから落下しないように前面に取り付けるベルトを下腿の後面にサポートするようにつけることで、足尖がフットレストに乗らないように工夫した。座圧分析装置にて座面から殿部が浮き上がっていないか確認したところ、殿部がシートから浮いていないことが確認できた。
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