研究課題/領域番号 |
26750272
|
研究機関 | 名桜大学 |
研究代表者 |
石橋 千征 名桜大学, 健康科学部, 准教授 (30609962)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 運動学習 / 運動制御 / 知覚 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、集団スポーツ競技であるバスケットボールのリバウンド行為(標的到達行為)を対象に、携帯型眼球運動計測器を用い、視覚情報と運動情報のフィードバックによる運動学習効果を検証することである。さらに、学習効果を検証する際に獲得した様々なパラメータから、データマイニングの手法を用いて、複雑に変化する環境下における、選手の競技力を判断しうる新たなパラメータを抽出することを目指している。集団スポーツ競技は時間的・空間的な制約だけではなく、競技のルールやチーム戦略などの制約が常に存在するため、ヒトの高次な行為を検討するのに適している。 平成26年度は、携帯型眼球運動計測器を用い、視覚情報と運動情報の即時フィードバックによる運動学習効果を検証するための基礎実験を繰り返し実施した。被験者として、所属大学の男子バスケットボール部員(熟練者)とバスケットボールの専門的な指導を受けた経験のない一般男性学生(非熟練者)を採用した。実験環境は、実際の試合と同様に 5 人対 5 人形式でのリバウンド局面を再現した。また、リバウンダーとなる被験者には、非接触型眼球運動測定器(NAC 社製,EMR-9)を装着してもらい眼球運動データを獲得した。これら基礎実験で得られた結果をもとに、国内、国外学会での発表を予定している。今後は、被験者自身だけではなく、他者の動作や眼球運動データを観察するという視覚経験に加え、自らが運動をするという運動経験やその運動経験なしなどの組み合わせによる群比較を実施することで、知覚-運動スキルトレーニングの効果を検証予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、男性熟練バスケットボール選手を用いて、実際の試合と同様に 5 人対 5 人形式でのリバウンド局面を再現し、熟練者の視覚探索活動を実験的に計測した。その結果、集団競技において複雑に変化する戦術下にて、熟練者の視覚のふるまいを可視化することが出来た。この研究成果は、原著論文として投稿中であり、国外学会にて発表を予定しているが、視覚情報と運動情報のフィードバックによる運動学習効果を検証し、その効果を研究発表出来る段階にまでは至っていない。運動の学習効果を検証するためには、経時的データの積み重ねが必要となるが、本年度購入した携帯型眼球運動計測器により、データを獲得する回数が増加させることが出来る。また成果報告や意見交換会の場において、他分野の研究者からのアドバイスを受け、上記の課題だけでなく、次年度で改善する予定である実際のゲーム中で獲得できる様々なデータ、特に運動学変量を簡便に獲得する手法の手がかりをみつけることができ、平成26年度の遅れを次年度以降で充分に取り戻せる段階にある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、平成26年度の結果を鑑み次の2点を予定している。 1つ目は、平成26年度より継続して、実際のゲームを再現した環境下(日本バスケットボール協会公認コート、リング、ボール等)で多人数同時計測し、熟練選手のリバウンド行為の動作パターンを定量的に検証する。そして、被験者自身だけではなく、他者の動作や眼球運動データを観察するという視覚経験に加え、自らが運動をするという運動経験やその運動経験なしなどの組み合わせによる群比較を実施することで、知覚-運動スキルトレーニングの効果を検証する。学習が促進されると、 熟練者と類似した視覚探索ストラテジーを獲得すると考えられるため、運動学変量と合わせて、詳細な学習過程の変化も検証する予定である。 2つ目は、平成26年度より継続し、実際のバスケットボールゲームを撮影し、更なるデータの拡充させる予定である。従来のスタッツと呼ばれる選手のプレー内容や結果に関する統計数値だけではなく、実験で獲得した様々なパラメータから、選手の競技力を判断するパラメータを抽出する。抽出された様々なパラメータの集合を用いて、バスケットボール競技の勝敗の要因を分類する。データマイニングの手法は、データの蓄積により分析の信頼性を向上することが可能となるため、初年度より定期的にデジタルビデオ撮影し、多数、多変量のデータを用いることで生態学的妥当性を確保している。 平成26年度と同様に研究成果は、適宜公の場(国内・国外学会、原著論文等)で発表する予定である。また、協力して頂く大学体育会バスケットボール部だけではなく、所属大学の地域クラブや学校(高校、中学等)に情報を発信し、アウトリーチ活動を充実させる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に購入予定であった実験用計測機器の値段が、為替レートの変動のために、当初予定額より上回ることが予想される。そこで、次年度使用額は、その購入資金を確保するために生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成26年度と平成27年度で実験用計測機器の補充を終えるため、その実験用計測機器を購入するために使用する。また、平成28年度は前年度より継続してデータを獲得し、本研究課題の内的および生態学的妥当性を検証する予定である。研究成果を公の場で発表するための旅費やアウトリーチ活動のための諸費用は確保しているため、本研究の目的は達成できる。
|