本研究では,レースにおける競技記録(以下:パフォーマンス)とスタート局面との関係を検討するとともに,跳び出しから入水後までを一連の動作として捉えるための定量的評価システムを構築することを目指した. 2014年度では,スタート局面とパフォーマンスとの関係について検討するため,公益財団法人日本水泳連盟科学委員会が報告している日本選手権100m自由形に出場した男女競泳選手のレース分析結果を用いて,パフォーマンスと各局面との関係について検討した.その結果,スタート局面とパフォーマスントとの間には有意な相関関係が認められた.また,スタートについて,水上から水中に至るまでの泳者の加速度変化を捉えようと水中加速度計を用いて計測を試みた.しかしながら,加速度センサに不具合が生じていたため,計測の実施が困難であった. 2015年度では,4泳法を対象にし,スタート局面とパフォーマンスとの関係について検討した.その結果,スタート局面とパフォーマンスとの間には有為な相関関係が認められたものの,100m種目ではストローク局面とターン局面の影響が大きいことが明らかとなった.さらに,各局面(スタート,ストローク,ターン,フィニッシュ)との関係について単回帰分析を用いて,競技記録から各局面の目標時間を推定する式を新たに作成した.この推定式を活用することで,目標とする記録に対して,スタート局面に要する時間を予測あるいは目安として活用することができる.一方で,加速度センサによるスタート動作の計測が困難であるとともに,入水時に加速度センサへの衝撃の影響を完全に防げないことから,画像による動作分析に方法を修正した. 2016年度では,スタート動作の水上と水中の動作を同時に撮影するための撮影システムを開発した.この撮影システムを用いることで,跳び出しから入水に至る一連の2次元動作分析が可能となった.
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