本研究の目的は、近代日本における野球文化の形成について、野球が定着していく過程で生成し定着した「精神野球」「武士道野球」「野球道」といったキーワード、あるいは甲子園野球などのイベントをめぐる言説を題材として解明し、それによって従来の野球史像の見直しを図ることであった。本研究が明らかにしたのは、戦後における「野球道」言説の主要な担い手として元巨人軍監督の川上哲治が挙げられること、そして1970代において「斜陽化した」プロ野球との対比で甲子園野球の価値が相対的に上昇し、それによって「教育の一環」というスローガンが正統性を得たことが「野球道」言説に対する支持を広げる基盤となったことである。
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