研究課題/領域番号 |
26750293
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
徳安 達士 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (50435492)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自転車運動 / ペダリング技術 |
研究実績の概要 |
自転車競技者の身体条件に最も適したサドル位置を探索するための手がかりとして,本研究ではこれまでペダリング運動に参加する4つの下肢筋群の活動パターンに着目してきた.一方,自転車競技には,筋力を効率的に自転車推進力に変換するペダリング技術が提唱されており,広く実践されている. 平成26年度,本研究はペダリング技術に着目し,その可視化に取り組んだ.ペダリング技術の可視化に成功すれば,そこに新たな評価値を見出し,評価値を最大化するようなサドル位置を内省的に得られる可能性がある. そこで,本研究では市販の競技自転車にクランク周りのパワーメーターを取り付け,クランク回転角を計測できる実験装置を構築した.ペダリング技術に評価基準を設けるため,1名の熟練競技者のペダリング運動データを取得し,15度クランク回転毎のそれぞれの下肢筋活動量を算出し,これらをベクトル化した.次に,初心者を被験者とし,ペダリング運動中に15度クランク回転毎に筋活動量を実時間で算出し,同様にベクトル化した.これらの作業を実時間で行い,相関行列を逐次更新し,主成分分析を施す.そこで得られた主成分得点に運動生理学的な意味づけを行い,モニタに出力することとした.結果として,ある熟練競技者を基準とするペダリング技術のバイオフィードバック装置の完成に至った.以後,被験者を初心者だけでなく,中級者を対象として実験を重ね,構築したシステムの機能検証を行うとともに,最適なサドル位置の自動探索システムへと実験装置を発展させる方法について検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を遂行するために,本研究ではペダリング運動中に変動する「下肢筋群の活動パターン」,「パワー伝達効率」,「サドル位置に影響を受ける関節可動域」を定量化して,これらを入力値とする評価関数の構築を目指している.本研究ではこれら3つをペダリング運動の特徴量として定義し,個々に数値化することを目論んでいたが,評価関数を構築する際に,内部での重み成分を決定する段階で困難が生じた.これについて共同研究者らと思案を重ねる中で,以前より提唱されてきたペダリング技術に活路を見出し,ペダリング技術は,本研究が定めるところのペダリング特徴量を包括した概念であるとの結論に至った. そして,本研究ではペダリング技術の可視化を実現するために,新たな実験装置として競技自転車を導入し,これにパワーメータとクランク回転角度計測器を取り付けることで完成させた.同時に,ペダリング運動中の下肢筋群表面筋電位を実時間で計測するソフトウェアを構築した.これらにより,ペダリング運動の大腿直筋,大腿二頭筋,腓腹筋,前頸骨筋の活動量を15度クランク回転刻みで推定し,さらに実時間での主成分分析ソフトウェアを独自に構築したことで,ペダリング技術の可視化に成功した. このようにペダリング技術を定量的に捉えることで,これまで検討を続けてきたペダリング運動の特徴量に置き換えることができ,これを評価値として最適なサドル位置を探索する方法について議論を進めることができる.
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今後の研究の推進方策 |
今後,本研究は可視化したペダリング技術を評価値とするサドル最適位置の自動探索ソフトウェアの開発に取り組む.一方で,自転車の機材設定を固定としたまま,ペダリング技術を内省的に改善できる装置としての利用も,今日の自転車競技会においては重要であると考えられるため,これらを平行して進めていく考えである.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画を遂行するために必要な物品や消耗品を購入することができており,研究成果報告のための学会にも参加することができている.次年度使用額として1万円程度の残額が生じたが,細かな消耗品を購入するよりも次年度に有効利用する方針を選んだ.
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次年度使用額の使用計画 |
ソフトウェア構築後に,実験を繰り返し行うことでシステムの機能を高めていくことになる.その際,表面筋電位測定用の電極など,消耗品を多用するため,それらの補充費に充てる計画である.
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