競技用自転車のサドル位置を選手のペダリング運動の効率化の観点から最適化するためには,ペダリング運動の評価基準を設ける必要があった.そこで本研究では,熟練競技者1名がペダリング運動をする際の下肢筋より表面筋電位を測定し,筋活動パターンを定式化した.さらに,主成分分析を施し,得られた主成分を運動生理学的に意味づけを行い,これをペダリング運動の評価基準とした.さらに,主成分分析の結果を独自の方法で表示することによって,ペダリング技術の可視化手法として定義した.これらの技術によって,競技者が自身のペダリング運動を客観的にモニタリングしながらトレーニングできる環境を新たに構築することができた. しかしながら,ペダリング技術の可視化手法では,被験者のペダリング運動を熟練競技者のそれと統計的に比較した結果が示されるものの,ペダリング運動を効率化するサドル位置の評価として扱うことができなかった.そこで,本研究はペダルの回転角度と同時にペダルシャフト周りの3軸加速度データを取得し,カーネル型主成分分析に施すことを試行的に行った.結果として,熟練者と初心者,中級者との明確な差を可視化することに成功した.今後,明確となった技術差を数値化し,サドル位置を最適化するための評価値として用いることについて検討していく予定である.
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