研究課題/領域番号 |
26750303
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
川西 範明 順天堂大学, スポーツ健康科学研究科, 研究員 (00706533)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リゾリン脂質 / 運動 / ミトコンドリア / 血管新生 / 骨格筋 |
研究実績の概要 |
持久的運動トレーニングは骨格筋組織においてperoxisome proliferator-activated receptor gamma coactivator (PGC) -1αを活性化することでミトコンドリア生合成や血管新生などの生体適応を引き起こすことが知られている。しかしながら、運動による骨格筋の生体適応の作用機序については十分には解明されていない。近年、脂質メディエーターは生体応答により細胞外に放出され、細胞増殖など多様な生理作用を持つ物質として生体制御に重要な役割を有することが明らかになってきた。脂質メディエーターの一種であるリゾリン脂質はPGC-1を制御する様々な細胞内情報伝達物質を活性化することにより血管新生などの生理作用を持つことが知られている。そこで、運動に伴って産生される脂質メディエーターが骨格筋の生体適応を制御すると仮説を立て、動物実験および細胞培養実験により検証している。 初年度は、マウス骨格筋培養細胞株であるC2C12細胞を用いて、各種リゾリン脂質がミトコンドリア増殖に及ぼす影響について検討した。オレイン酸含有リゾホスファチジン酸(LPA)、パルミチン酸およびステアリン酸含有のリソホスファチジルコリン(LPC)およびリソホスファチジルイノシトール(LPI)を1uM、5uMおよび25uMの濃度で24時間刺激して、細胞内ミトコンドリア量を評価するMitoTracker Gleenの蛍光強度をフローサイトメトリー法により定量したが、全ての濃度で蛍光強度の増加は観察されなかった。また、上記のリゾリン脂質刺激条件でPGC-1α、ミトコンドリアの転写調節因子であるTfamおよびミトコンドリア構成タンパク質であるシトクロムcの遺伝子発現は増加されなかった。したがって、低濃度のリゾリン脂質刺激は骨格筋細胞のミトコンドリアを増殖しない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の研究計画として、高速液体クロマトグラフ質量分析計を用いて、持久的運動に伴う血液および骨格筋組織中のリゾリン脂質の変動の検討を予定していたが、実際に検体を用いての分析には着手できていない。現在は、質量分析を用いた各種脂質成分の解析法の確立を行っており、2年度目以降に運動によるリゾリン脂質の変動を検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
運動による骨格筋適応を制御する生理活性因子を特定することは、新規創薬の開発などへの貢献も期待されている。今後は、現在確立した質量分析を用いた各種脂質成分の解析法を導入して、持久的運動により変動する生理活性脂質を特定するために網羅的なリピドミクス解析を実施する。また、質量分析イメージング装置を導入して、骨格筋組織におけるリゾリン脂質の局在の観察技術を確立することで、運動に伴い生理活性脂質を生成する筋線維タイプの同定を試みる。また、細胞培養実験を継続して、骨格筋細胞のミコンドリア増殖を制御する生理活性脂質を見出す。
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