リゾリン脂質は細胞増殖や血管新生などの生理作用を有することから、持久的運動による骨格筋の適応にもリゾリン脂質が関与する可能性が考えられる。しかしながら、持久的運動によるリゾリン脂質の変動については未だ不明瞭である。そこで、平成27年度は持久的運動により骨格筋中および血液中で変動するリゾリン脂質の探索を行った。具体的には、マウスに中強度の持久的走行運動を負荷して、運動直後、運動6時間後および24時間後に血液および骨格筋組織を採取した。血漿および骨格筋組織から脂質成分を抽出した後に、高速液体クロマトグラフ質量分析計を使用して、各リゾリン脂質分子種の濃度を測定した。その結果、持久的運動直後に骨格筋組織中で特定の脂肪酸を含有するリゾホスファチジン酸が増加することが示された。また、リゾホスファチジルコリンおよびリゾホスファチジルエタノールアミンは、運動後経時的に骨格筋組織中および血漿中で特定の脂肪酸を含有する分子種の濃度が増加することが示された。以上の結果から、持久的運動は骨格筋中および血液中のリゾリン脂質の濃度を変動させることを見出した。また、イメージング質量分析装置を使用して、骨格筋線維タイプでの脂質分子種の含有量の違いを検証するために、脂質分子種の局在を検討した。その結果、骨格筋でのリン脂質分子種の局在を明らかにすることができた。平成28年度は、運動により変動が観察されたリゾリン脂質分子種の生理作用についての検証を行う。
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