最終年度となる平成28年度は、高齢者における筋力トレーニングの介入試験を実施した。計画通りに試験を終了したが、開始時期が予定より遅れ、年度内に解析を終えて成果を公表するには至らなかった。一方、予定していた被験者数(20名)をはるかに越える50名の被験者を集めることができたため、解析の幅が広げられると考えている。平成29年度に、解析を終えるとともに国際誌で公表することとする。 研究全体として、1)高齢者と若齢者の運動単位の活動特性を比較すること、2)運動単位の活動特性の加齢変化における筋群差を明らかにすること、3)筋力トレーニングが高齢者における運動単位の活動特性に及ぼす影響を明らかにすること、の3つの目的を掲げていた。1については、これまで報告がほとんどなかった高齢者と若齢者との間の運動単位活動の差異を詳細に示すことができ、当該分野において重要な知見を公表できた(Watanabe et al. AGE 2016)。2については、方法論の問題により、本来の目的を達成することはできなかったものの解析手法の問題が筋群間で生じるという新たな知見を得られた点で今後の研究にとって有用な成果であったと考えている。3については、若齢者を対象として実施した試験において、これまでのトレーニングによる神経系の適応に関する概念に対して再考の必要性を訴えうるデータを公表できた(Watanabe et al. Eur J Appl Physiol 2015)。既に終えている高齢者におけるトレーニング介入試験の結果を若齢者の結果と比較し、高齢者に特化した運動プログラムの形成へと発展していきたい。
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