培養一次求心神経細胞は,酸により機械刺激に対して感作させられる.その酸による機械反応増強作用は,コンドロイチン硫酸により抑制されることが報告されている.本研究では,その現象を神経線維レベルでとらえることを目的としている.また,それをヒトに応用し,運動に伴うアシドーシスで運動昇圧応答が過剰になることを抑制できないか検討することも目的としている. ラット取り出し神経-筋標本を用いて筋細径求心神経線維の活動を記録した.pH6.2の酸暴露により,機械刺激に対する感受性は有意に(p < 0.05)増大した.しかし,0.3%コンドロイチン硫酸の筋注をすると,酸の影響は有意に(p < 0.05)抑制された.さらに,0.03%コンドロイチン硫酸筋注によっても同等の有意な抑制効果(p < 0.05)を観察できた. 対照の実験としてクレブス・リンゲル燐酸緩衝液を筋注する実験を実施したが,酸による機械反応増強作用は有意に抑制されなかった.また,酸暴露を行わずに0.3%コンドロイチン硫酸を筋注しただけでは,その前後の機械反応に有意差は認められなかった.これらの結果から,酸による機械反応増強作用は,コンドロイチン硫酸により抑制されることが示唆された. ヒトを対象にした実験では,最大握力の25-30%で2分間の掌握運動実施直後に虚血にした.この虚血に伴うアシドーシス環境下にてリズミックな掌握運動による昇圧応答をコンドロイチン硫酸摂取2週間前後にて比較したが,昇圧応答に有意な低下は認められなかった.理由の一つとして,動物で得られた知見よりも生体内でのコンドロイチン硫酸濃度は10倍程度薄いことが考えられた.しかしながら,虚血に伴うアシドーシス環境下のリズミックな掌握運動による昇圧応答がコンドロイチン硫酸摂取後に明らかに低下している被検者もみられ,今後もヒトを対象にした研究は続けていく必要がある.
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