研究課題/領域番号 |
26750312
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
高倉 久志 同志社大学, スポーツ健康科学部, 助教 (20631914)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 時計遺伝子 / 骨格筋 / 転写因子 / ミトコンドリア / 細胞内酸素代謝 / 持久的トレーニング |
研究実績の概要 |
持久的トレーニング(TR)の継続によって筋組織内のミトコンドリア量が増加し、持久的運動能力が向上する。これらの適応には、PGC-1αが重要な働きを担っている。PGC-1α発現が時計遺伝子による調節を受けて概日リズムを示すことを踏まえて、時計遺伝子発現リズムに基づいた9週間のTRを実施し、主要時計遺伝子の一つであるBmal1発現量がピークを示すタイミングで運動を実施したTR群において、他の時間帯でのTR群と比較してミトコンドリア関連タンパク質の有意な増加が認められた。つまり、TRを実施する時間帯によってトレーニング効果が異なることが示唆された。上述したトレーニング効果の違いは、1回の運動に対して骨格筋の異なる応答が積み重なった結果によって引き起こされたのかもしれない。したがって、1回の運動に対する骨格筋の応答が時計遺伝子の発現リズムに基づいた運動実施タイミングの違いによって異なるのか否かについて明らかにするために、時計遺伝子の発現リズムに基づいた一過性の持久的運動がミトコンドリア生合成やそれに関連する因子のmRNA発現量に及ぼす影響について検討を行った。その結果、TRによって生じた適応と同様に、Bmal1発現量がピークを示すタイミングで運動を実施した際に、PGC-1αやミトコンドリアタンパク質であるクエン酸合成酵素(CS)のmRNA発現量が顕著に増加することが示された。以上のことから、運動実施タイミングの違いが骨格筋組織に異なった適応をもたらす背景には、一過性運動に対する応答の違いに起因する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、時計遺伝子の発現リズムに基づいた9週間の運動トレーニング(TR)によって骨格筋組織適応に違いが引き起こされたメカニズムを明らかにするために、時計遺伝子の発現リズムに基づいた一過性運動が骨格筋組織の応答に及ぼす影響を検討することを目標としていた。 一過性運動による応答を検討したところ、運動直後において骨格筋適応の違いを引き起こした鍵因子と考えられるPGC-1αのmRNA発現量の増加の程度が運動を実施する時間帯で異なっていることを示すデータを取得できた。また、その鍵因子の発現量に違いをもたらすメカニズムを明らかにするために、内分泌系によって鍵因子を賦活する経路や炎症反応によって鍵因子の発現量を抑制する経路についても検討したところ、一過性運動後における鍵因子の発現量変化をサポートするような結果を得られた。したがって、現在までの達成度は「おおよそ計画通りに達成されている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、必要に応じて本年度に実施したトレーニング(TR)実験及び一過性運動の追試、骨格筋組織に関する未検討項目の実験を実施する予定である。また、これまでに運動実施タイミングの違いによって骨格筋組織の適応や応答が異なる可能性を示唆する実験データが取得できていることから、今後は時計遺伝子の発現リズムに基づく1日2回TRがトレーニング効果を更に助長させる可能性について検討する。これまでの先行研究において、2日間で2回のTRを実施する際にその実施タイミングを変えたTRの継続はトレーニング効果に違いをもたらすことが報告されている。この運動プログラムにおいて、時計遺伝子の発現リズムもトレーニング効果の違いを生み出す一因として関与するのであれば、時計遺伝子発現リズムに基づく1日2回TRはトレーニング効果を更に助長させる可能性が考えられる。
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