今年度は、昨年度に取得したデータの分析、考察、論文の執筆を行った。これまでは、反動動作による筋力増強は、腱に蓄積された弾性エネルギーの利用が主要因と考えられてきた。しかしながら、本研究において、腱を有する条件と腱を排除した条件間で反動効果の程度を比較したところ、反動効果に有意差は認められなかった。この結果は、少なくとも本研究の実験設定においては、腱の反動効果への貢献は無視できるほど小さいことを示しており、その他の要因である、予備緊張およびresidual force enhancementが反動効果の主要因であることを示唆している。しかしながら、本研究はラットのヒラメ筋およびアキレス腱を対象としたものであり、ヒトやその他の動物とは、筋力や腱の構造が異なることに注意する必要がある。例えば、ラットのヒラメ筋はヒトのヒラメ筋ほど発達しているわけではないため、アキレス腱を牽引する力が弱く、腱に弾性エネルギーを蓄積することができなかったということも考えられる。これらを考慮すると、本研究によって結論付けることができるのは、「腱に蓄積された弾性エネルギーは必ずしも反動動作による筋力増強に貢献しない」、および「弾性エネルギー以外の要素が反動効果に貢献しており、その要因としては予備緊張とresidual force enhancementが挙げられる」の2つである。
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