平成29年度は、実験に参加した29名の被験者から測定した運動学的・動力学的データを分析し、その結果を学会やセミナーで発表した。統制条件では、被験者は30㎝の台高から両脚でドロップジャンプを行い、約30㎝ジャンプした後、地面反力計上に利き脚で片脚着地を行った。実験条件でも同様のタスクを行ったが、ドロップジャンプで約30㎝跳躍した瞬間から着地が終了するまで、着地脚側の大殿筋を経皮的電流刺激により強制的に収縮させた。2条件間の運動学的、動力学的指標の相違を、性別×条件の2要因分散分析により検証した。その結果、実験条件における大殿筋の過度で制御されていない予備収縮および着地後の収縮は、ACL損傷メカニズムと関連が深いタイミングである、接地時、最大地面反力発生時、および最大膝伸展モーメント発生時において、統制条件よりも有意に股関節を外転および伸展位にすることが示された。また、骨盤の空間における位置においても、前述の全てのタイミングにおいて、実験条件では統制条件よりも側方傾斜および後傾位を示すことが示された。着地動作などの減速動作時における大殿筋の収縮は、ACL損傷予防において重要であることが指摘されている。しかし、過度で制御されていない大殿筋の収縮は、上体を支持脚へ傾け、さらに後傾位にする可能性があるため、ACL損傷リスクを高める可能性があると言える。このような状況は、例えば、バスケットやハンドボール選手がジャンプを行い、空中で他の選手に後方に押された時に、転倒を避けるために、股関節を伸展させて無理やり後ろに足を出すような状況に類似していると考えられる。このような状況は、体幹の位置にも影響を及ぼし、ひいてはACL損傷リスクも増大させると言える。 今後も引き続き分析を進め、各種下肢アラインメントが、実験条件のタスク中において膝関節負荷にあたえる影響を明らかにする。
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