本研究ではシステム動態解析を用いて,高強度・間欠的運動種目の競技特性が高強度運動に対する骨格筋の糖質代謝機能の動的特性に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした.初年度に構築した13C安定同位体比分析を用いて,アスリートは健常者に比べて,安静時糖代謝能が優れており,4週間のdetrainingによって安静時糖代謝能は低下することを明らかとした.また,最終年度は激運動開始時,サッカー選手は他競技選手に比べて,酸素摂取量は同等にも関わらず,経口投与したグルコースの代謝を抑制していることを明らかとした. 上記のような研究成果を得た一方,データを解釈する上で以下の点が不明瞭であった. ①経口投与した13Cグルコースがどの器官に取り込まれ,代謝されているのかが不明:経口投与した13Cグルコースの安静時代謝量は,アスリートが健常人よりも優れていることや4週間の脱トレーニングによって減少することを示した.投与した13Cグルコースは微量(100 mg)であり,血清インスリン値や血糖値は変化していない.測定は安静状態で行っているため,主な代謝器官はインスリンの有無に関わらずグルコース取り込みが可能な肝臓であることが示唆されるが,明確なデータは示されていない. ②サッカー選手の激運動時における経口グルコース代謝の抑制に関する機序が不明:激運動開始時,サッカー選手は他競技選手に比べて,経口投与した13Cグルコースの代謝を抑制していた.しかし,酸素摂取量は同等であることから,サッカー選手のように,日常,インターバル運動を繰り返しているアスリートは,経口投与したグルコース以外の基質でエネルギーを代償していると示唆されるが,明確な機序は不明である. 今後,上記,不明点や仮説を検証することで,ヒトで示した13Cグルコース代謝がどの器官における代謝を反映しているのかが明らかになると考えられる.
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