本研究の目的は,低酸素環境で行う高強度インターバルトレーニングが,糖脂質代謝および身体組成に及ぼす影響について検討することである.本年度は,低酸素環境で行う3週間の高強度インターバルトレーニングが,身体組成および血中糖脂質代謝マーカーに及ぼす影響について,常酸素環境で行う同様のトレーニングと比較検討した. 健常成人男性16名を常酸素トレーニング群(8名)と低酸素トレーニング群(8名)に分類し,自転車エルゴメーターをもちいて高強度インターバルトレーニングを実施した.負荷は体重×0.075 kpとし,両環境下において30秒間の全力ペダリングを行った.トレーニングは,両環境ともに週2回,3週間(計6回)実施し,1週目は4セット,2週目は5セット,3週目は6セット行った.低酸素環境でトレーニングを行う際は,酸素濃度を13.6%に設定して行った.身体組成の測定は,トレーニング前後の安静(空腹)時に実施した.採血に関しても,トレーニング前後の安静(空腹)時に肘静脈より行い,遊離脂肪酸,グルコース,インスリン,トリグリセライド(TG),総コレステロール,HDLコレステロール,LDLコレステロール,レプチン,アディポネクチン,抵抗性指数(HOMA-IR:グルコースおよびインスリン濃度から算出)の測定を行った. 体脂肪量および体脂肪率は,トレーニング前と比較しトレーニング後で有意に低下したが,群間における有意差は認められなかった.TG,レプチン,アディポネクチンは,トレーニング前と比較しトレーニング後で有意に低下したが,群間における有意差は認められなかった.他の測定項目に関しては,トレーニング前後で有意な変化は認められなかった. 以上の結果より,低酸素環境で行う3週間の高強度インターバルトレーニングは,常酸素環境で行う同様のトレーニングと比較し,身体組成および糖脂質代謝マーカーの変化に影響を及ぼさない可能性が示唆された.
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