本研究の目的は、筋グリコーゲン貯蔵量と生体電気インピーダンス法から推定される体水分量変化の関連性を明らかにすることである。本年度は、筋グリコーゲン貯蔵量が減少した際に生じる体水分量変化の特徴を明らかにする研究を実施した。 本年度の研究では、成人男性を対象に筋グリコーゲン貯蔵量が通常レベル、または低下した状態になるよう運動・食事介入を行った。対象者は筋グリコーゲン枯渇のための運動を実施し、その後24時間にわたり糖質含有量の異なる2条件 (PLA または CHO条件) の食事を摂取した。運動前後と運動24時間後に筋グリコーゲン貯蔵量を測定した。筋グリコーゲン貯蔵量の測定には炭素の磁気共鳴分光法を用い、対象部位は大腿部筋とした。また、運動前と運動24時間後に各身体セグメントにおける細胞内外液量を測定した。細胞内外液量の測定には部位別生体電気インピーダンス法を用いた。 筋グリコーゲン貯蔵量は両条件で運動後に有意に減少した。運動24時間後のグリコーゲン貯蔵量はCHO条件では運動前と同程度まで回復したが、PLA条件では回復は認められなかった。一方、各身体セグメントにおける細胞内・外液量の変化パターンに条件間で有意な違いは認められなかった。すなわち、筋グリコーゲン貯蔵量の減少は、インピーダンス法から推定される細胞内外液量を変化させる要因とはならないことが示唆された。 本研究により、筋グリコーゲン貯蔵量の顕著な増加は生体電気インピーダンス法から推定される細胞内液量の部位特異的な増加を引き起こすが、筋グリコーゲン貯蔵量の減少は細胞内外液量を変化させる要因とならないことが示された。これらのデータは、筋グリコーゲン貯蔵量の増加を生体電気インピーダンス法から推定される体水分量の変化から推定できる可能性を示す。
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