研究課題/領域番号 |
26750322
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井隼 経子 九州大学, アドミッションセンター, 准教授 (70625946)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レジリエンス / 注意機能 / 注意の時間的側面 / 注意バイアス / 注意の瞬き |
研究実績の概要 |
レジリエンスとは,精神疾患から心を防御する個人の特性や状況の変化に適応していくための活性化プロセスであり,一般にストレス対処能力とされる。 本年度も引き続きレジリエンスと注意の関係について検討した。昨年度はフランカー課題を用いて,注意の空間的側面を検討した (井隼・河原, 2015)。その結果,レジリエンスが高いものは注意の範囲が広く,低いものは狭いということが示された。しかしながら,注意機能には空間的側面に加え,時間的側面もあり,レジリエンスと時間的側面に関してはまだ検討されていない。そこで本研究は,注意の時間的側面を反映する注意の瞬き (attentional blink; AB) を用いてこの問題を検討した。高速逐次視覚呈示される倒立顔の写真の中から,2つの標的として正立顔を探す課題を実験参加者に課した。第1標的は性別判断,第2標的は表情判断であった。レジリエンス尺度得点を目的変数,各表情 (中性表情,怒り顔,笑顔) のAB強度を説明変数とした重回帰分析を行った結果,怒り顔のAB強度とレジリエンス得点との間に有意な正の関連が示された。このことから,レジリエンスには不快情報への一時的な注意バイアスが関係していることが示唆された。 以上のことから,レジリエンスが異なることで,注意機能の時空間側面両方に違いが生まれることが示唆された。このことは当初予測したとおり,レジリエンスと注意機能とか一部共有するリソースを用いていることを示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は,注意の瞬き課題を用いてレジリエンスと注意の時間的側面を検討した。成果は,日本基礎心理学会第35回大会において発表された。また,本課題の一連の成果は,The 6th Asian Congress of Health Psychology (ACHP2016)のシンポジウムにて発表された。しかしながら,今年度は研究代表者の所属変更及び業務の関係上,研究成果を出版するには至らなかった。現在,1本の投稿論文の修正及び執筆を行っているが,早急に成果を出版できるようにしたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,研究成果の学会発表及び論文出版を行う。また,継続して,実験及びトレーニング課題の効果検討を行う予定である。それらの結果を,早い段階で論文発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
先に述べたように,本年度は研究代表者の所属変更に伴う移動で研究が一時中断し,環境を新たに整える必要があった。また,本務の増加により本事業へのエフォート率が減った。その為,実験の計画を変更する必要があった。
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次年度使用額の使用計画 |
実験計画は遅れが見られるものの,本事業の延長により遂行は十分可能であると考えられる。本年度は,新たな環境が整ったため計画を遂行することは可能である。また,研究代表者による計画遂行が困難なときには,リサーチアシスタントを雇用することを考えている。
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