本研究は,地域在住の健康高齢者を対象にエンパワーメントを重視した住民参加型の介護予防活動を実施し,個人の生活機能および共助としての自主グループ活動の活性化に与える長期的効果を,質的及び量的側面から明らかにすることを目的としている.平成30年度の研究活動は大きくまとめて①エンパワーメント型介護予防プログラムの実施,②フォローアップ・プログラムの実施,③調査の実施,④研究活動のまとめ,の4点であった. ①については,選定された2地域の対象者を居住地域ごとに介入群・対照群に割り付け,介入群には高齢者のエンパワーメントを重視したエンパワーメント型介護予防プログラム,対照群には介護予防専門家による講話を中心とした従来型の介護予防プログラムを6か月間実施した. ②については,介護予防プログラム終了後の両群において,自主グループ化への移行期間として,フォローアップ・プログラムを6か月間実施した.介護予防専門家は活動に参加し,介護予防活動の補助や運営に関する助言を適時行い,高齢者主体でのグループ活動を可能とするよう段階的に関与を減らした. ③については,介入前後およびフォローアップ後に自記式アンケート調査,フォローアップ期にインタビュー調査,介入プログラム期・フォローアップ期・自主グループ期の全期間を通して両群の参与観察を実施した. ④については,本研究でこれまでに得られた質的および量的データの解析作業を実施し,高齢者の生活機能及び自主グループの設立・継続過程に及ぼす効果を検討した.また,今後得られる追跡調査データを含めて本研究の主たる目的である長期的効果についての検討を深め,学会発表および論文作成をすすめていく.
|