研究実績の概要 |
目的で掲げた労働者のパフォーマンス向上のためのセルフケア認知行動療法プログラムの開発および効果検証について,2016年度に実施した保健医療職の15名を対象に実施した前後比較デザインの研究データ解析を進めるとともに,統制群を設定した介入研究を情報通信系の企業で働く21名を対象に実施した。 保健医療職の15名を対象にした介入においては,ベースライン時に心理的ディストレスが高い対象ほど職場にいる際に不活発であり,特に平日の勤務時間内と昼食時において低強度活動(1.6-2.9METs)が少なく,平日の昼食時において中・高強度(3.0METs以上)の活動量が少ないことが明らかになった。なお休日での関連は見られなかった。介入の効果評価については,主要評価項目である客観的な身体活動量は介入の前後で統計的な差がみられなかった。副次的評価項目である介入前に対する介入後(time3)の心理的ディストレスの変化は-0.7(95%CI -2.0, 0.5),心理的非柔軟性の変化は-1.8(95%CI -3.6, 0.0),生活満足度の変化は0.3(95% CI 0.0, 0.6)であった。 研究全体の成果については,まず労働者のパフォーマンス評価について,客観的な活動量計を用いた測定により,間接的ではあるが定量的に評価できる可能性を示せた。 研究内容の普及については,研究を進める際に参考にした研究報告のガイドラインなどについて,効果研究や尺度研究の統計解析上の留意点を学会で解説したり,働く人向けのトレーニングマニュアルである『The Mindful and Effective Employee』という書籍を監訳者として関わり,関心ある職場で実施したりするなど,研究遂行上得た知識を他の研究者に啓蒙する活動も行った。
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