研究課題
本研究では、肥満症と糖尿病の多施設前向きコホート1334例登録による大規模データベース構築に成功し、肥満症・糖尿病における単球・マクロファージ(Mφ)機能や脂肪組織に由来する生理活性物質・TSP-1の病態意義、及び摂取栄養素と心血管病指標との関連を検討した。その結果、頸動脈硬化症では糖尿病合併により単球・プラークの炎症性M1/抗炎症性M2バランスが増悪化し(J Atheroscler Thromb 2016 in press)、TSP-1は内臓肥満起因性疾患に関連する可能性を認めた(Metabolism 2015)。さらに、栄養調査より、大豆製品摂取率と抗動脈硬化ホルモン・アディポネクチンに正相関を認め、血中エイコサペンタエン酸(EPA)/アラキドン酸(AA)比とアディポネクチンにも正相関があることを見出した。基礎的検討から、脳内炎症担当細胞である脳内Mφ・ミクログリアにおいて、EPAにより炎症性サイトカインTNFα産生が抑制されることも認めている。また、大豆イソフラボンはエストロゲン様作用等を有し、脳梗塞等の予防効果が期待されている。イソフラボン成分ダイゼインは腸内細菌代謝によりエクオール(EQ)に変換されるが、EQ産生菌を持つヒト(EP)と持たないヒト(ENP)が存在する。本研究にて、肥満症54例中、EPは17例(32%)であり、一般人の報告50%より低率であることを見出した。さらに、EQ投与(EQ 10 mg/日、3ヶ月間)によりLDL-Cと動脈硬化指標CAVIが低下すること、そのLDL-C低下とCAVI低下は正相関することも認めている。以上、本研究成果は脂質の質(EPA/AA比等)や腸内細菌叢改善(EQ産生向上等)が心血管病リスク低減に寄与する可能性を示す成果であり、EPA/AA比やEQ産生能の活用を介した、より効果的な栄養指導指針確立に貢献できると考えられる。
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J Atheroscler Thromb
巻: 23 ページ: 印刷中
Metabolism
巻: 64 ページ: 1490-1499
10.1016/j.metabol.2015.07.016.
http://www.hosp.go.jp/~kyotolan/html/guide/medicalinfo/clinicalresearch/endocrinology/endocrinology.html