研究課題/領域番号 |
26750331
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高田 真吾 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (60722329)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミトコンドリア機能 / 骨格筋 / 運動能力 / 脳由来神経栄養因子 / マイトファジー / ミトコンドリアダイナミクス / マイオカイン / 老化 |
研究実績の概要 |
老化は万人に生じる事象であり、妨げることができない。特に、老化によるミトコンドリアの機能的・形態的障害(ミトコンドリア不全)はあらゆる臓器において、代謝疾患を惹起する。脳由来神経栄養因子(BDNF)はTrkB受容体を介して、ミトコンドリア機能・量を調節し、細胞におけるエネルギー代謝において極めて重要な役割を担っている。本研究の目的は、BDNF-TrkBの活性化が、老化に伴うミトコンドリア不全によるエネルギー代謝異常による疾患の発症・進展を抑制するという仮説を検証するとともに、BDNF-TrkBシグナル制御によるミトコンドリアの機能的・形態的適正化という独自の概念に基づく新たな老化、疾患予防・治療を目指すものである。 BDNFはTrkB受容体を介して、神経の成長・分化、シナプスの可塑性に関与することが知られている。我々はヒトにおける血中BDNFレベルが老化に伴い低下することを明らかにした。近年、BDNFは脳ミトコンドリア機能の増加、また、PGC-1αを介してニューロン樹状突起棘のミトコンドリア生合成を増加することが報告された。さらに、骨格筋培養細胞において、AMPKのリン酸化を介して、脂肪酸酸化を亢進することが報告されている。我々も、BDNF-TrkBシグナルの活性化がAMPK-Sirt1-PGC-1α経路の活性化を介して、骨格筋ミトコンドリア機能および量を制御することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である1)骨格筋ミトコンドリア機能およびBDNF-TrkBシグナルが老化によって低下すること、ヒト血中BDNFが加齢によって低下することを明らかにした。2)BDNFノックアウトマウスが骨格筋ミトコンドリア機能不全を呈することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
老化マウスのミトコンドリア処理機構、ダイナミクス制御におけるBDNFシグナルの役割の解析を行う。老化マウス(野生型)の骨格筋、およびBDNFノックアウトマウスもしくはTrkBノックダウン細胞よる得られたミトコンドリアを用いて、平成27年度計画で行うミトコンドリア形態・機能を評価する。 1.老化マウスのミトコンドリア処理機構制御におけるBDNFシグナルの役割の解析:(1)老化マウスおよび正常骨格筋培養細胞での検討、(2)BDNFノックアウトマウスおよび骨格筋BDNFもしくはTrkBノックダウン細胞 2.老化におけるミトコンドリア処理機構におけるBDNF-TrkB活性化の効果の検討:(1)老化マウスにおけるリコンビナントヒトBDNF投与の効果の検討、(2)老化マウスにおけるTrkB受容体作動薬(7,8-DHF)投与の効果の検討 (3)BDNFノックアウト(KO)マウスにおけるミトコンドリア処理機構の検討
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験施設の改修があり、研究実施・動物飼育場所の変更・制限により、研究遂行に想定以上の大幅な遅延が生じた。延長することにより、加齢モデルマウスが追加供給され、生化学実験のサンプルが確保できる。また、補助事業の目的を精緻に達成するための研究の実施(追加(再現)実験の実施が出来、学会参加、論文投稿を実施することも可能となる。
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次年度使用額の使用計画 |
加齢モデルマウスを追加繁殖し、生化学実験を行うための試薬・抗体、アッセイキットを購入する。また、その成果の学会、論文発表費に使用する。
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