研究課題
平成28年度は、首都圏の健診コホートにおける3年目の追跡調査を行った。昨年度までに明らかにした高齢者が歩行(約1 km)、自転車(約2 km)で移動しようと思う距離に基づき、対象者の自宅から1 kmと2 km範囲以内の多様な施設(集会所、公園、レクリエーション施設、文化施設など)の数と、範囲内のバス停、鉄道駅における路線数をそれぞれ算出し、歩行移動と自転車移動との関連性を縦断的に検討した。基本属性、調査開始時の総身体活動量、人口密度、平均傾斜角度を調整したCox回帰分析の結果、平成25年度時点では歩行移動時間が週150未満の者であっても、自宅から1 km以内に文化施設が多くある者や、範囲内の鉄道駅における路線数が多い者は、3年間のうちに歩行移動時間が週150分以上に達する可能性が有意に高まることがわかった。また、自宅周辺の高い人口密度が将来的な週150分以上の歩行移動時間の到達を予測した。自転車移動に関する分析では、自転車移動がない者が3年間のうちに自転車移動を開始することを有意に予測できた施設はなかった。将来的な自転車移動の開始については、自宅周辺の人口密度が高いことと、平均傾斜角度が小さいことが有意な予測因子であった。高齢者における歩行や自転車移動と環境要因の関連性を3年間の縦断研究として検討できたことは、縦断研究が乏しい当該分野において一定の成果を得たといえる。なお、平成28年度は、一度は打ち切られた中山間地域コホートの追跡調査の復活に向けた交渉を行った。その結果、平成25年度と同様の悉皆調査を平成29年6月に実施することになり、4年後の追跡調査が実現できることになった。引き続き、中山間地域コホートと首都圏の健診コホートの両コホートを追跡し、更なる研究の発展に努める。
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