これまでに、Zizimin2(Ziz2)が骨髄B細胞の形成のみならず、辺縁帯B細胞の形成ならびに辺縁帯への局在を促進する事が示唆された。加えて、辺縁帯B細胞と類似の機能を有する腹腔内B1細胞の割合が、Ziz2KOマウスで減少する傾向である事も確認した(WTマウスとの間に有意な差は検出されなかった)。 そこで、平成27年度は、Ziz2と構造的に類似したZizimin3 (Ziz3)がZiz2と、特に腹腔内B1細胞の形成に関して、機能的な重複があるという仮説を立て、研究を実施した。その結果、Ziz2とZiz3の両遺伝子を欠失した(DKO)マウスでは、WTマウスに比べて腹腔内B1b細胞の数が減少している事が判明した。さらに、DKOマウスでは、腹腔内に投与した肺炎ワクチン(Pneumococcal Polysaccharide type 3)に対する抗体産生が、免疫後の後期(19日目)に低下する事が判明した。加えて、高齢マウス腹腔由来B1b細胞では、若齢マウスに比べて、Ziz2とZiz3の遺伝子発現量が減少している事が判明した。これらの結果より、Ziz2は、高齢者で問題となる、感染症への免疫防御機構において重要な働きを有する辺縁帯B細胞や腹腔内B1細胞の形成ならびにその機能に関与する事が考えられた。さらに、本年度は、マウスZiz2のプロモーター領域に対するレポーターアッセイも実施し、Stat6の結合配列が存在する-798~-791がZiz2遺伝子の発現を調節する事、ならびに、高齢マウス脾臓由来T細胞では、若齢マウスに比べて、Stat6の発現量が有意に低下する事も判明した。この事から、Ziz2を発現しているリンパ球の数のみならず、T細胞におけるStat6の発現量の低下も、加齢に伴った免疫組織内におけるZiz2遺伝子発現量の低下に寄与する可能性が示唆された。
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