本研究では,身体活動の概日リズムを規定している要因およびその概日リズムと生活の質との関係を明らかにすること,そして身体活動の朝型夜型と時計遺伝子群との関係を明らかにすることを目的とした.そのために本研究では,住民における運動疫学研究(研究Ⅰ),若年者を対象とした,身体活動の概日リズムと時計遺伝子群との関係(研究Ⅱ)を実施した. まず研究Ⅰでは,中高齢者男女合計約300名に対し,生活リズムを中心とした質問紙調査および活動量計装着による7日間以上の身体活動量調査を実施した.質問紙は,朝型夜型質問票(MEQ),国際標準身体活動質問票(IPAQ),身体活動の各時間帯に関する意識,主観的QOL,主観的ADL,およびピッツバーグ睡眠質問票を用いた.その結果,朝型の者は身体活動量が多い傾向が見られた.また,朝の身体活動を規定している因子は,健康への意識よりも,精神的満足度が深く関与していた.一方,夕方の身体活動に明確な特徴は見出せなかった.特に自立した生活を送る後期高齢者に着目すると,朝型リズムを持つ者の主観的QOLは,全般的に朝型になるほど良好であった.一方,主観的ADLおよび保有する疾病は朝型夜型リズムとの間に関連は認めなかった. 研究Ⅱでは,健常若年者の時計遺伝子群と,生活リズム(食事や運動との関係,朝型夜型の頻度,睡眠の質等)との関係を横断的に調査した.本研究は研究期間終了(平成28年3月)までに,約100名の遺伝子サンプルを取得しており,今後は解析作業に入る予定である.この研究の遅れは,研究代表者の異動により,研究フィールドの変更および研究デザインの修正が必要となったためであるが,時期の遅れ以外,研究自体に問題はない.今後解析を進め,学術雑誌等で結果を公表する予定である.
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