研究課題/領域番号 |
26750362
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
鈴木 絵里子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00468513)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脂質代謝改善 |
研究実績の概要 |
当研究室のこれまでの研究実績から、ob/obマウスへのSMTP-7の投与(i.p.)により、体温が上昇し、血中コレステロールレベル、中性脂肪やエネルギー代謝に関わる遺伝子の発現が上昇していることが明らかになっていた。このことを踏まえ、今年度はC57/BL6マウスに同様にSMTP-7を投与し、約3か月(12週間)という長期間にわたる体温の計測を行い、生理食塩水投与群との群間比較(n=20)で体温上昇をモニタリングすることで、代謝向上活性の有無を確かめた。その際、連日体重測定、摂餌量の計量も並行して行った。また、12週後にマウスの肝臓、血液、内臓脂肪、褐色脂肪組織(BAT)、腓腹筋の採取、計量を行った。結果、生理食塩水投与群と比較して、SMTP-7投与(3日間の連投、i.p.)翌日に顕著且つ有意な体温上昇が認められた。(P<0.01) 内臓脂肪量、腓腹筋の筋重量には2群間で有意な差は認められなかったが、褐色脂肪組織重量については、SMTP-7投与群で増加傾向が認められた。現在、肝臓組織については凍結切片の作製とoil red O染色による脂肪量の変化を解析中である。また褐色脂肪組織については、エネルギー代謝および体温調節に関わるミトコンドリア脱共役蛋白質(uncoupling protein-1;UCP-1)に着目し、real time PCR法を用いた解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画であった、ERストレスシグナルとSMTP-7には関与を見出すことができなかったものの、in vivo試験でSMTP-7投与により、健常マウスにおいて顕著な体温上昇が認められたことから、エネルギー代謝亢進に関わる別の遺伝子変動に焦点を絞ることができそうである。また、これは現在進行形であるsEH KOマウスでの追実験の結果をもって、sEHの関与についても検証することができると確信している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究結果から、ERストレスシグナルとSMTP-7には関与を見出すことができなかったものの、SMTP-7によるエネルギー代謝亢進活性は、炎症状態であるか否かに関わらず必ず起こるということが明らかとなった。脂質代謝や体温上昇に関わる別のシグナルに焦点を当てて、今後の研究を進めていく方針である。SMTP-7による脂質代謝改善作用にsEHの関与があるか否かを検証することが本研究の目的であるため、現在sEH KOマウスでの同様の検証を行うべく、準備を進めている。また今年度行った実験について、長期投与後のwash out期間を設けたクロスオーバー試験も検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究成果を発表すべき国際学会(国際血栓止血学会)は隔年で開催されるため、来年度の旅費が大幅に増えることを考慮し、本年度の支出は控えた。また、実験に用いるsEH KOマウスは別のプロジェクトで以前購入したものを大学内の施設にて繁殖させているため、大きな支出はなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会発表のための旅費、遺伝子変動を追うためのreal time PCR用の試薬、体温測定用のチップおよび親機の使用料などに充てることを計画している。
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