研究実績の概要 |
我々はこれまでにSMTP-7が可溶性エポキシドハイドロラーゼ(sEH)阻害を介して、抗炎症作用を示すこと、また種々の動物モデルにおける優れた抗炎症活性はこのメカニズムに起因することを明らかにした。しかし、エネルギー代謝亢進や脂質代謝改善作用との関連性については未解明であった。そこで、今年度は、野生型およびsEHKOマウスにSMTP-7の断続的かつ長期的投与を行い、体温・その他代謝関連パラメーターの変動解析を行い、さらに肝臓RNAを用いて投与後に発現上昇する遺伝子をDNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。 その結果、SMTP-7投与後に有意な体温上昇が認められ、また肝臓中遊離脂肪酸、トリグリセリドも野生型マウスにおいて有意に減少していた。摂餌量、体重、臓器重量には変動は認められなった。マイクロアレイの結果、脂質代謝および炎症に関わる遺伝子であるLnc2, Saa, Defb25を含む複数の遺伝子にSMTP-7の投与による大幅な発現上昇が認められた。それら遺伝子の大幅な発現上昇は野生型マウスにおいてのみ認められ、sEH KOマウスに置いては認められなかった。また、同様に野生型マウスへのSMTP-7の単回投与により遺伝子変動をqPCRにより確認したところ、再現性が得られたことから、SMTP-7は短期的および長期的・断続的な投与により、上記の遺伝子発現を正に調節していることが示唆された。尚、上記の遺伝子発現変動が、炎症惹起によるものではないことを確認するべく、マウスへのSMTP-7単回投与後の肝臓由来RNAを用いたqPCRによりTNF-alpha, IL-1beta, IL-6, MCP-1, MMP-9の発現変動を解析したところ、いずれも投与前後で変動が認められなったことから、アレイで得られた遺伝子発現変動は炎症の影響によるものではないことが明らかとなった。
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