研究実績の概要 |
これまで、SMTPの有する抗炎症作用の標的分子であるsEHの有するN末端phosphatase活性阻害の意義は、血管内皮細胞における接着分子発現抑制を介した単球接着抑制活性等で示唆はされているものの、確証となる結果が得られていなかった。SMTP長期投与マウスとその対照群(生理食塩水投与)、SMTP長期投与sEH KOマウスとその対照群(生理食塩水投与)の4群の血漿を用いて行ったDNAマイクロアレイ解析の結果より、約63000遺伝子の内、SMTP投与群の遺伝子発現パターンが、sEH KOマウスの遺伝子発現パターンと酷似しており、尚且つKOマウスへのSMTP長期投与により変動する遺伝子はほぼ皆無であった。SMTP投与によりsEH KOと同等の遺伝子発現変動パターンがもたらされたことから、SMTPの作用はsEH-KOと同等と考えられる。一方、Cterm-EHの選択的阻害剤ではこのような作用が見られなかったことから、N末端phosphatase阻害の寄与が明確となった。さらに、SMTP投与により発現上昇する遺伝子の内、100倍以上の大きな増幅を認めた、Lcn2, Saaについて、SMTP単回投与により発現上昇が確認できた。また、初代培養肝細胞においても、SMTP添加により同様に上記の遺伝子発現増加を確認した。さらに、当研究室において発見された修飾アミノ酸のいくつかに、sEH N末端phosphatase特異的な阻害活性が見出されているが、これらの修飾アミノ酸のマウスへの単回投与によってもLcn2, Saaの発現増加が認められたことから、SMTPによるsEH阻害がもたらす表現型や生理的に有用な活性には、N末端phosphatase阻害が強く関与することが示唆された。
|