研究課題/領域番号 |
26750363
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
瀧川 紘 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (70550755)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 天然物合成 / 生物活性物質 / 二量体 / アントラキノン / キサントン |
研究実績の概要 |
テンサイ褐斑病は、生育期のテンサイの葉や葉柄に褐色の病班が発生する病害であり、世界中のテンサイ栽培地域において深刻な経済的影響を及ぼしている。本研究では、テンサイ褐斑病の原因物質の一種であるアントラキノン-キサントン二量体天然物の合成と機能制御とを目的とする。具体的には、全合成を基盤とした系統的な構造活性相関研究を行う。 平成26年度は標的化合物の全合成に向け、(1)架橋鎖に芳香環が縮環したビシクロ[3.2.2]ノナジエン骨格の構築、ならびに(2)ひずみ化合物を利用したアントラキノン部の構築に関するモデル実験、の2点を検討した。 (1)アリールパラジウムのエノンに対する分子内共役付加反応を活用したビシクロ骨格の構築を行った。つづいてジエンの構築、ならびに橋頭位におけるSN1反応によるハロゲンの導入により、鍵となる橋頭位ハライドを合成した。 (2)分子内に親双極子を有するベンゾシクロブテノンオキシムに酸化剤を作用させると、酸化的なベックマン開裂反応によりアリールニトリルオキシドが発生した後、つづけて1,3-双極子付加環化反応が進行し、対応するイソオキサゾリンを与えることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要で述べた通り、平成26年度の研究を通じ、標的化合物の骨格構築に関する進捗があった。標的化合物はこれまでに前例のない独特で複雑な構造を有しており、合成の可否が最大の課題であることから、その足掛かりが得られたことは期待通りの成果であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は(1)標的化合物の全合成、(2)類縁体や誘導体の合成と生物活性評価、に主眼を置く。具体的には、平成26年度の研究で得られた知見を集約させ、標的化合物の全合成に向けた収束型合成経路の開拓を目指す。すなわち、ビシクロ構造を有する中央ユニットに対し、まずは標的化合物の7環性骨格のうち、アントラキノン部を含む5環性骨格を構築し、その後キサントン部の構築を検討する。さらに類縁体や誘導体を合成し、阻害剤の探索を指向した構造活性相関研究へと展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本学の発注・納品システムが大幅に変更され(2015年1月より試行、4月より実施)、研究費使用のプロセスが煩雑になったことが主たる原因である。一方、今年度の研究は既存の設備や試薬、器具を活用することによっておおむね順調に進捗し、当初想定していたほど物品費がかからなかったことや、本研究の成果発表を行うための学会が近郊で開催され、旅費や宿泊費に関わる出費が抑えられたことも一因として考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度はさらに研究を推進させるべく、年度前半の早い時期(4~5月中)に、装置、器具、試薬の充実を図る。また、学会発表や論文投稿など、研究成果の外部発信についても積極的に取り組む予定である。
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