研究実績の概要 |
天然に存在するアントラキノン-キサントン複合型天然物の中には、二量化と集積化を経て高次構造体を形成し、細胞膜貫通型イオンチャネルとして働くものが存在する。本研究では、こうした化合物を有する機能と構造とに興味を持ち、その合成研究を検討した。 昨年度に引き続き、特異なアントラキノン-キサントン複合構造を有するアクレモキサントンAの合成を検討した。合成上の課題は、架橋鎖に芳香環が縮環したビシクロ[3.2.2]ノナジエン構造の構築、および核間位の第4級炭素の構築、である。これらの課題に対し、H28年度までに、①パラジウム触媒を用いたビシクロ骨格の構築、および②ハロゲン-金属交換反応によって発生させた橋頭位アニオンの求核付加反応、に関連し、モデル化合物を用いた検討によって有望な知見を得ていた。これを踏まえ、H28年度は、必要な官能基を備えた中間体を用い、上記①の求核付加反応を検討した。その結果、反応の成否は温度条件の厳密な制御にかかっていることが判明し、高収率で再現性良く付加体を与える条件を見出すことに成功した。次に、得られたアルコールを用い、B環の構築とG環単位の導入を検討した。すなわち、まず、1段階でオキシムへと変換した後、適切な酸化剤を作用させることによって、発生したニトリルオキシドがC1-9a位アルケンと分子内1,3-双極付加環化反応を起こし、対応するイソオキサゾリンを与えた。その後、C10位カルボニル基のジアステレオ選択的還元、C環の脱芳香化、そして分子間1,3-双極付加環化反応を経、ABCDEG環に相当する8環性化合物の合成に成功した。現在、全合成に向け、F環の構築について検討中である。
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