研究課題/領域番号 |
26750367
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
松尾 龍人 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究員 (60623907)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トロポニン |
研究実績の概要 |
本研究課題は,心筋症原因となる変異が心筋トロポニン分子のピコ秒領域ダイナミクスに与える影響を,中性子散乱を用いてサブユニットレベルで明らかにしようとするものである.そのために,研究対象である心筋トロポニン(3つのサブユニットTnC, TnI, TnT2から構成される)の2つのサブユニットを重水素化し,残り1つのサブユニット(計測対象となるサブユニット)を重水素化しないままトロポニン複合体を形成させる.このようにして,野生型及び変異型(TnTのK247R変異)トロポニン複合体の溶液試料を調製し,中性子準弾性散乱(QENS)によってダイナミクスが変異によってどのように変化するかを明らかにする. 今年度は,サブユニットの重水素化システムを進展させた.中性子散乱実験では,一般的な生化学実験とは異なり大量の試料(50~100mg)が要求される.従って,高効率・高収率のタンパク質重水素化システムが必須である.緑藻から抽出されるペプトンを用いて最小培地下で大腸菌を培養し,タンパク質が大量に発現されることを確認した.今後は,緑藻を重水中で培養することでペプトンを重水素下し,重水素下サブユニットを作成し,中性子散乱実験に供する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特定のサブユニットが重水素化されたトロポニン複合体の調製に向けて,サブユニット重水素化に必要な試料調製環境を整えることができた.このペースで研究が進めば,補助事業期間内に中性子散乱実験データの取得及び解析を終えることが可能であるため,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,野生型及び変異型トロポニンについて,トロポニン分子内の特定サブユニットのみを重水素化した複合体の溶液試料を調製し,中性子散乱実験を行うことを目標にする.本実験により,心筋症につながる分子内の変異によってサブユニットレベルでどのようなダイナミクス異常が起こるのかを明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも消耗品の使用量が少なかったため.但し,次年度は試料の大量調製のために,重水をはじめ消耗品の使用量が大幅に増える予定である.
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次年度使用額の使用計画 |
重水素化サブユニット調製に必要な試薬類の購入,及びデータ解析用PCと周辺ソフトウェアの購入に充当する予定である.
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