Caの結合・解離により心筋収縮を調節するトロポニン(Tn)の変異が家族性心筋症を引き起こすことは広く知られている.しかし,変異によってTnの分子特性にどのような異常が起こるのかこれまで不明であった.そこで本研究では,野生型及びK247R変異型Tnの中性子準弾性散乱実験を行い,変異によるピコ秒領域の分子内運動変化を調べた.その結果,Ca結合によって野生型と変異型は逆のダイナミクス変化を示し,+Ca状態では変異型構成原子の運動振幅が野生型より大きくなることが分かった.変異による機能異常が生じるのは+Ca状態であることから,変異体分子内運動の振幅増大が心筋症発症と関連していることが明らかとなった.
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