研究課題/領域番号 |
26750372
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
杉山 康憲 香川大学, 農学部, 助教 (10632599)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リン酸化シグナル / プロテインキナーゼ / マルチPK抗体 / Phos-tag / タンパク質リン酸化 |
研究実績の概要 |
細胞内情報伝達において重要な役割を果たすプロテインキナーゼ(PK)は、タンパク質のリン酸化を介して、多様な生命現象に関与している。哺乳動物のPKは500種類以上の知られており、状況に応じてその活性が調節されている。従って、細胞内でのPKの全体像を解析することができれば、生命現象の基本メカニズムの解明や、疾病の原因究明において非常に重要な意味を持つ。 我々はこれまでにPK間で高度に保存された領域を認識することで幅広いPKを検出できるマルチPK抗体を作製した。この抗体を用いることで細胞内PKの発現をプロファイルすることが可能である。多くのPKは上流のPKや自己によるリン酸化でその活性が制御されることから、PKの活性とリン酸化は密接に関係している。そこで、リン酸化タンパク質をシフトアップバンドとして検出可能であるPhos-tag SDS-PAGEでタンパク質を分離後、マルチPK抗体を用いたウエスタンブロット解析を行うことで、細胞内PKの発現量と活性を同時に捉える手法を考案した。 当該年度においては、まず上記手法における電気泳動などの各種条件の設定を完了させた。この条件を用いて細胞内PKのリン酸動態の解析に進んだ。INS-1細胞に50% FBSやホスファターゼ阻害剤であるオカダ酸を処理し、代表的なPKであるPKAのリン酸化動態を解析した。細胞内PKAをPhos-tag SDS-PAGEを用いて解析したところ、定常状態のPKAは約50%がリン酸化されており、オカダ酸処理によって100%がリン酸化フォームとなることが判明した。この時、マルチPK抗体を用いることで、このPKAのリン酸化動態に加え多数のPKバンドを同時に検出することができた。これらの結果より、新たに考案した手法を用いることにより、細胞内PKのリン酸化動態を捉えることが可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では、まずマルチPK抗体とPhos-tagを組み合わせた細胞内プロテインキナーゼ(PK)の新規解析手法の条件設定を行う。そして、細胞に多様な刺激を与え、その際の細胞内PKのリン酸化動態を捉えることを目的にしている。本年度の研究により、マルチPK抗体とPhos-tag SDS-PAGEを組み合わせた手法の条件設定は完了した。また、INS-1細胞に様々な処理を行った際の細胞内PKAのリン酸化動態を含む多数のPKの動態をマルチPK抗体を用いることで捉えることができた。そのため、これらの目的はいずれも達成されていることから、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
通常の一次元の電気泳動で細胞抽出液中のタンパク質を分離し、マルチPK抗体を用いてプロテインキナーゼ(PK)を検出すると多数のバンドを検出することができるが、多数のリン酸化PKを含む細胞抽出液をPhos-tag SDS-PAGEを用いて解析すると多くのバンドがシフトアップするため、どのPKのバンドがシフトアップしているか判断がつかなくなるという問題点が生じる。そこで、まず一次元目として等電点分離を行い、各PKを異なるpHで分離する。次に、二次元目としてPhos-tag電気泳動を用いることにより、各PKのリン酸化フォームをシフトアップスポットとして分離する。分離したタンパク質をマルチPK抗体を用いたウエスタンブロットにて解析することで、どのPKのスポットがリン酸化しているかを決定する。これにより、どのPKがリン酸化によってシフトアップしているかを判断することが可能となり問題点を解決できると考えた。以上のように、二次元電気泳動を利用した手法の開発を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
その他の経費として使用予定であった論文校正費や論文投稿費を使用しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に必要な細胞培養関連試薬や生化学実験試薬などの物品費に充てる。
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