高齢化社会に突入した我が国において、アミロイド病の原因物質といわれるアミロイドペプチド・タンパク質に関する研究は、治療や診断といった分野はもちろん、ナノスケールの線維や凝集体を形成することに着目したナノ材料分野など、各方面で重要になってきている。しかし、現在においてもアミロイド研究は遅々として進展しておらず、その最大の理由として、凝集体の形成条件が各研究で異なることが挙げられる。そこで本研究では、従来の手法では難しかったこれらペプチド・タンパク質の凝集プロトコルを規格化することで、いつでも誰でも、同条件で、物理化学的アッセイや特に細胞アッセイなどが行えるシステムの構築を目指している。平成27年度は引き続きペプチド合成樹脂を担体として用いた本システムの構築を試みることにした。ペプチド合成樹脂を用いることにより、樹脂に直接、ペプチド合成を高純度に行うことにより、固定化作業を経ずに、樹脂にモノマーのまま、アミロイドを固定化することが可能となる。こうすることで、比較的難しい精製ステップを省けるほか、固定化の際の凝集の懸念もなくなる。本システムがうまくいくかどうか様々な条件を検討するために、比較的扱いやすい、アミロイドβペプチドの部分配列をモデルとして用いることにした。今回は比較的簡便に樹脂からの切断が可能となる塩基性切断樹脂を用いた。固相合成によるペプチドの樹脂上での固定化とモノマー化を行った結果、ある程度、高純度にペプチドを樹脂上に配置することが可能であった。次に、細胞アッセイが行えるよう、ペプチド樹脂自体の毒性評価を行った。その結果、毒性のあるペプチドを有する樹脂でも目立った毒性は見られなかった。さらに、高効率かつ正確に樹脂から遊離させたペプチドの細胞毒性を評価できる手法の確立も試みた。
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