研究課題/領域番号 |
26750380
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
植松 朗 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 基礎科学特別研究員 (90716242)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 青斑核 / ノルアドレナリン神経 / 扁桃体 |
研究実績の概要 |
過度な恐怖情動は心身に様々な障害を引き起こすことが知られており、これら障害の治療法を確立するためには、恐怖条件づけモデルを用いて恐怖反応に関わる神経回路を理解することが重要である。近年、恐怖情動において重要である扁桃体において、ノルアドレナリン(NA)が恐怖条件づけ学習時に重要であることが分かってきた。そこで、本研究ではNA神経が多く存在する青斑核に焦点を当て、恐怖条件づけ学習におけるNA神経の役割を明らかにすることを目的とした。恐怖条件づけ時の青斑核NA神経の必要性を検討するため、光によって神経活動抑制をするArchaerhodopsinチャネル(Arch)を用いた。アデノ随伴ウイルスを用いることでラットのNA神経特異的にArchを発現させ、青斑核上部に光ファイバーを留置した。恐怖条件づけでは実験動物に音を条件刺激(conditioned stimulus; CS)、それに続いて嫌悪刺激である電気ショックを無条件刺激(unconditioned stimulus; US)を与えると、その後CS提示のみで動物はUSを恐れてすくみ上る反応を示す。学習時のCSもしくはUSと同時に青斑核にレーザーを照射してNA神経を抑制し、その時間的役割を検討した。CS時抑制群では対照群との変化はなかったものの、US時抑制群では恐怖反応が対照群に比べて減少することが明らかとなった。 次に恐怖条件づけ時のNA神経応答を記録するため、上記と同様にNA神経にArchを発現させた動物の青斑核に光ファイバーとともに電極を埋めこんだ。レーザーによって瞬間的に抑制されるシングルユニットをNA神経として同定し、その後恐怖条件づけを行った。約70%のNA神経が電気ショックに対して反応を示すこと、また条件づけが進むにつれて多くのNA神経がCSに対してより大きな応答を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの行動実験と電気生理の実験から、恐怖学習時には電気ショックに対するNA神経応答が必要であること、またCSに対する反応が増加していくことが明らかとなったものの、以下の2点においては計画書通りには進まなかった。 1)計画書にあるChR2とによるNA神経細胞の電気生理での同定方法は、ChR2を発現させるベクターを数種類試したものの上手くいかなかったため、ArchTを用いる手法に切り替えた。 2)扁桃体中心核に投射するNA神経の役割を調べるため、青斑核NA神経にArch-GFPを発現させることで神経軸索末端にArch-GFPを発現させようとしたが、ベクターを投与したThCre動物ではベクター投与後12週間でも神経軸索での発現は免疫染色でも確認はできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定として、アデノ随伴ウイルスによる扁桃体での青斑核NA神経軸索のArch発現をさせる代わりに、投与した部位から逆行性に運ばれる改変型Rabiesウイルスを使用することで扁桃体に投射する青斑核NA神経の役割について検討したい。また、青斑核NA神経がその投射部位ごとの解剖学的な相違もしくは役割の相違について扁桃体以外の投射部位についても検討したい。 さらに、恐怖記憶の消去学習についてもNAの関与が示唆されていることから、青斑核NA神経の消去学習への関与について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置の都合上、数匹の動物購入をとりやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今期にとりやめた数匹のラット購入を行い実験を行う。
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