最初に恐怖記憶の消去学習における青斑核ノルアドレナリン(NA)神経の役割について、ThCreラットを用いて青斑核NA神経特異的に光感受性抑制性ポンプを発現させることで検討を行った。CS中の神経応答を抑制すると24時間後の消去記憶が阻害されること、一方でCS直後に抑制しても関係のなかった。よってCS中の青斑核NA神経の応答が消去学習に必要であることが明らかとなった。 現在まで青斑核のノルアドレナリン神経はすべて均一で同じ機能を有すると考えられていた。しかしノルアドレナリン神経内においても解剖学的・電気生理学的な特徴の相違があることがと報告されてきている。そこで本研究では青斑核NA神経がその投射部位によって機能が異なるかどうかについてを検討した。まず、異なる色の逆行性トレーサーを扁桃体と前頭前野に投与したところ、異なる青斑核NA神経が標識された。これら扁桃体投射NA神経と前頭前野投射NA神経の恐怖条件づけや消去学習時における機能を解析するため光感受性抑制性ポンプを発現するRabies virus(RV)を扁桃体もしくは前頭前野に投与し、青斑核NA神経にレーザーを照射した。恐怖条件づけの電気ショック時に扁桃体投射NA神経を抑制すると24時間後の恐怖想起が抑えられるが、前頭前野投射NA神経を抑制してもこの効果は見られなかった。消去学習時においては前頭前野投射神経をCS中に抑制すると消去学習も24時間後の消去学習想起のどちらも阻害されることが明らかとなった。また面白いことに扁桃体投射NA神経を消去学習時に抑制すると24時間後の想起における恐怖反応がより低くなった。以上の結果から青斑核ノルアドレナリン神経は均一ではなく、投射部位特異的な機能が存在することが明らかとなった。
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