研究課題/領域番号 |
26750381
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
阿部 央 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (10711161)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 前頭前野皮質 / マーモセット / トレーサー |
研究実績の概要 |
平成26年度は、当初の予定を少し修正して行った。本研究では、社会性に特長を持つ霊長類であるマーモセットを実験に用いるが、マカクザルなどの他のサルに比べて、脳研究に用いられてきた実績が少ないため、神経解剖学的文献が少ない。これは、神経細胞の活動を記録する実験の際に、その記録用の電極を刺入する場所の特定に使える基礎データが少ないことを意味する。そこで、本研究の今後の実験の基盤となる知識として、まずは、前頭葉と他の脳領野との神経結合を明らかにすることにした。そのために、マーモセットの前頭葉の複数の箇所に、目印となる蛍光タンパク質を神経細胞に発現させるウイルストレーサーを注入して、それらの神経結合を調べる実験を行った。灌流固定後に、全脳の切片の半分を組織学実験に用い、脳領野を同定するのに使った。残りの半分の切片で、蛍光タンパク質の発現を観察し、注入部位からの投射先を調べた。その結果、マーモセットの前頭前野皮質の最前部は、マカクザル同様に、視床、側頭葉、頭頂葉と強くつながる神経結合を持つことを確認できた。また、前頭葉の運動前野も、細かい違いはあったが、ほぼ同様な神経結合を持つことがわかった。結果を総合すると、マカクザルとほぼ似た神経結合パターンを示すことが確かめられたので、今後は、マカクザルの神経解剖学的文献も考慮しつつ、今回のデータを参考に、他者認識に重要と考えられる側頭葉との神経結合を持つ、前頭前野の内側部の部位から、当初の予定通り、神経細胞活動記録を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は、年度途中で異動があったため、新しい職場でマーモセットを使う実験環境を新規に立ち上げる必要があった。具体的には、手術環境や実験室の整備、動物実験の倫理申請などを中心に行った。その合間に、以前の職場で実験を行うしかなかったため、時間と研究資源が限られており、当初の予定通りには進めることができなかった。しかし現在は、現職場において、マーモセットの実験環境を整えることができた。今後は、予定通り、申請した研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、平成26年度は、年度内に異動があったため、新たに実験環境を立ち上げる必要があり、当初の予定通りには研究を進めることができなかった。しかし、一方で、申請した研究の基盤データとなる、前頭前野皮質の神経結合に関するデータを得ることができた。このときの脳座標を参考に、具体的な神経活動記録部位を決定し、申請書に記載した実験計画を予定通りに進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、年度途中で申請者が異動となったため、新しい職場での実験の倫理申請や、実験室の整備などに時間がかかったため、申請した研究の実験を、予定通りの時間内に進めることができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に予定していた実験を、次年度に繰り越して計画通りに進めるため、神経細胞活動記録実験に用いる電極、ならびに、マーモセットを購入する。
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