研究課題/領域番号 |
26750383
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中道 友 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (70586164)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オプトジェネティクス / 光内因性信号イメージング / 視覚 |
研究実績の概要 |
本研究は、物体像認識のメカニズムを理解する鍵となり得る、高次視覚野TEO野-TE野間の神経応答特性の変換機構を解明することを目的としている。これの遂行にはまず、TEO野とTE野間で結合している神経細胞のペアを、動物が生きている状態で同定する必要がある。そこで平成26年度は、広い範囲の皮質間の結合パターンを生きている動物から記録する手法を新たに開発した。 提案手法では、オプトジェネティクスと光内因性信号イメージングという技術を用いる。オプトジェネティクスは対象とする神経細胞に光感受性たんぱく質を発現させ、神経細胞の活動を光で制御する手法である。光内因性信号イメージングは、赤色の光で照らした脳表の画像から、神経活動に起因した微小な光反射強度変化を検出し、脳表上のどこの神経細胞が活動しているかを画像化する手法である。即ち、TEO野でオプトジェネティクスを用い神経細胞を活動させ、投射先のTE野で光内因性信号イメージングを行うことにより、TEO野-TE野間の皮質間投射パターンを同定することができる。 初期視覚野(V1)と第二視覚野(V2)の境界付近の神経細胞は、両半球間で互いに投射することが知られている。これを利用し、提案手法の検証実験を行った。右半球のV1-V2境界領域でオプトジェネティクスの光刺激を複数箇所行い、右半球のV1-V2境界領域で光内因性信号イメージングにより神経活動を記録したところ、各刺激によって異なる部位に、投射された活動を記録できた。また、その投射パターンは必ずしも1:1でなく、空間的にも非対称であることが分かった。これらの結果は、神経活動の電気記録(電気生理実験)でも実証した。 以上より、提案手法は皮質間投射パターンの同定に有用であり、TEO野-TE野間の投射パターンの同定にも適用可能であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度前半は、提案するオプトジェネティクスと光内因性信号イメージングによる神経結合パターン可視化手法を確立するため、電気生理学的検証と、異なる動物間での再現性を確認する予定であった。前者は終了したが、後者については充分な実験結果が得られなかった。これは動物の個体差によって、発現させる光感受性たんぱく質の総量や、光内因性信号の強さに違いが見られたためであり、さらに複数の動物を使った検証が必要であると考える。また、平成26年度後半は、提案手法をTEO-TE野間に適用する予定であったが、前述の検証実験に遅れが出たため、まだ着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
検証実験における、異なる動物間での再現性の検討は引き続き行い、結果がまとまり次第、一度論文を作成する。また、別の動物を用意し、検証実験と並行してTEO-TE野間に適用する実験を進めることとする。 平成26年度は、脳脊髄液からウイルスを導入し、脳皮質の広い範囲に光感受性たんぱく質を発現させることも試みた。しかし結果として、脳脊髄液からでは光感受性たんぱく質を充分に発現させることは不可能であることが分かった。これに関しては、従来行ってきたガラスキャピラリーによる直接注入で代用可能であるため、引き続きこの方法で行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
提案手法の検証において、異なる動物間での再現性の確認で充分な成果が得られなかったため、旅費を使用せず平成27年度の実験動物と、実験に必要な消耗品の費用に充てることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
実験動物および消耗品の費用として使用する予定である。
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