本研究の目的は、中国海南省文昌市の村落に保管されている家系図の情報を利用して当地の人口の変化を復元し、東南アジア諸国に華僑として移住したことの意味を、人類生態学・人口学の立場から検討することである。具体的には、出生年、死亡年、および出稼ぎなどの理由によって転出した年の情報を使用して、1900年以降の人口推移を推計した。その結果、新中国成立以前にタイなどへの移住が多くあったこと、それに伴って1950年代中盤にかけて、人口が減少していることが明らかになった。その他の期間の人口は増加傾向にあり、1980年代の一人っ子政策導入による影響は特に見受けられなかった。
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