本研究課題は、湾岸アラブ諸国の現代史についての研究である。特に、湾岸アラブ諸国に深い影響を与えたイギリス帝国に注目し、1971年にイギリス帝国から湾岸アラブ諸国が独立するまでの政治や社会の変化を、アジア・アフリカ諸国の近代化とイギリス帝国の盛衰という世界史的な動態から読み直すことを目的とした。 本研究計画は4年計画の個人研究である。3年目となる今年度は、1年目と2年目の成果を踏まえて、これまでイギリスや湾岸アラブ諸国で収集した一次史料を検討することを計画した。また、可能であれば論文を出版するなどして国内外に向けた研究成果の発信にもつとめることを計画した。 結果として、今年度は次の通り順調に研究が進んだ。まず、当初の計画に沿って、これまでイギリスや湾岸アラブ諸国で収集した一次史料を検討した。さらに、こうした調査を進める中で、湾岸アラブ諸国だけでなくイギリス帝国全体の脱植民地化について新たな示唆を与える可能性の高い一次史料の整理を進めることが出来た。これは、イギリス帝国が20世紀後半に世界各地で隠蔽した機密文書群である。この機密文書群を整理しながら読み進める中で、イギリス帝国が世界各地で実行した機密文書隠蔽工作についての基礎的な事実を少しずつ明らかにすることが出来た。イギリス帝国が世界各地で実行したこの文書隠蔽工作については、まだ謎が多く残るが、ひとまずの暫定的な成果を査読付きの論文にまとめ、海外の学術雑誌に受理された。
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