研究課題/領域番号 |
26760004
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐川 徹 慶應義塾大学, 文学部, 助教 (70613579)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 土地収奪 / エチオピア / フロンティア / 抵抗 / 牧畜民 |
研究実績の概要 |
本年は、昨年度までに実地調査で収集してきたエチオピア西南部のフィールド・データの分析を実施するとともに、文献資料やウェブ記事などを用いて、エチオピアの土地収奪の現状を的確に把握するための調査をおこなった。エチオピアは土地収奪の「先進国」としてしばしばメディアに取り上げられてきた。外部資本によって100~300万ha程度の土地が取得されたという報告もなされている。だがこの2~3年のあいだに、国内に建設された複数の大規模農場が、資金不足や現地の住民の抵抗によって、経営規模の縮小や経営からの撤退を余儀なくされていることが明らかになってきた。とくに、エチオピアにおける土地収奪の象徴とされてきた、西部ガンベラ州に10万haを取得していたインド資本の農場が経営に行き詰まりをみせたことは、メディアでも大きく報じられた。私が調査しているエチオピア西南部のサウスオモ県のある郡でも、経営上の理由から二つの農場が経営から撤退していった。農場がつくられていた土地は、再び地域の牧畜民が自由に家畜を放牧する土地となった。また、この一連の事態との関連は不明だが、エチオピア政府は5000ha以上の土地を一度に外部資本へ貸し出すことを中止することにしたり、稼働後の農場に対する監視をつよめることにした、との発表がなされている。この政策の部分的な変更が、農場が建設される地域社会の事情を考慮することのない、上からの一方的な土地開発政策から転換する兆しとして考えることができるのかは不明であり、今後も事態を見守っていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度は健康上の理由から、当初予定していたエチオピアでの実地調査を実行することができなかったものの、フィールド・データの整理と文献資料やウェブ記事の分析によって、エチオピアの周縁地域において土地収奪が地域社会に与える実態については、当初から予期していたペースで明らかになってきている。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は、当初から予定していたエチオピアでの実地調査をおこなうとともに、2015年にやむを得ざる事情からキャンセルした実地調査もおこなうことで、農場が撤退したあとに、地域住民が残された土地をどのように利用しているのか、また農場建設に賛成した人たちと反対した人たちとのあいだに、どのようなやりとりがなされているのかを、明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度は、エチオピアでの約1か月程度にわたる実地調査を夏季に実施する予定であったが、体調不良であったため、調査を実施することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度に実施を予定していたエチオピアでの実地調査にくわえて、2015年度に実施できなかった実地調査もおこなう。つまり、合計2回の実地調査を2016年度におこなうことにする。
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