本研究の目的は、アフリカ大型類人猿の生息地であるガボンのムカラバ・ドゥドゥ国立公園と、コンゴ民主共和国(DRC)のルオー学術保護区のふたつの調査地において、(1) 研究活動が地域の開発と保全にあたえる影響を解明し、(2) 類人猿の研究と保全にかかわる諸アクターの役割や関係性を分析することによって、従来の「開発と保全の統合モデル」に新たに「研究」を組みこんだ並立モデルを考案することである。事業の最終年度(3面目)となる本年度は、これまでの成果をまとめて、5月の日本アフリカ学会第53回学術大会、3月に南アフリカで開催された国際ワークショップ「アフリカにおける参加型観光」で口頭発表した。7月~9月にはコンゴ民主共和国とガボンで現地調査をおこなった。ガボンにおける現地調査では、当地の政情不安のために予定変更を余儀なくされたが、現地のカウンターパートなどを通じて補足的に情報を収集した。ガボンの狩猟採集社会の変容についてまとめた英語論文がSenri Ethnological Studies誌、アフリカ熱帯林の狩猟採集民の人道危機に関する英語論文がAfrican Study Monographs誌にそれぞれ掲載された。また、アフリカ熱帯林の狩猟採集民の歴史に関する小論が『狩猟採集民からみた地球環境史―自然・隣人・文明との共生』(池谷和信編)に掲載された。全体をとおして当初の計画どおりに研究が進められ、3年間の計画もおおむね達成された。以上の成果全体をまとめた論文は、『アフリカ研究』に投稿予定である。
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