研究課題/領域番号 |
26760009
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大野 朋子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10420746)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | タイ北部 / 魔除け / 植物利用 / 宗教 / 栽培 / 植物景観 / 民族 / マリーゴールド |
研究実績の概要 |
地域・集落景観が民族文化を背景とした植物利用の違いに伴う人間生活や住居周辺における植物の植栽配置によって形成されることを民族植物学的フィールド調査と地理計測学的解析によって実証するために26年度はタイおよび中国雲南省における少数民族の祭祀活動について文献調査を行い、祭祀の状況とその時期を把握した。タイ北部の少数民族の多くは中国系民族と同じく、2月中旬の旧正月を1年で最も重要な祭祀としていることが分かった。 また、生活の中に祭祀活動が強く取り込まれている東ネパールにおいて、植物の利用と祭祀について現地調査を行った。ネパールのティハール祭という宗教活動にはマリーゴールド(Tagetes sp.)が大量に使用されている。民家の入り口や窓にマリーゴールドを飾り、神を招き入れるという。外来種であるマリーゴールドは、国内で栽培もされるが、需要が非常に多いために隣国のインドから輸入し、販売されていた。特に首都であるカトマンズでは、大輪で矮性、花弁がオレンジ色の品種が好まれて使用される傾向が見られた。カトマンズおよび周辺の民家では基本的に植物を植栽する庭園は見られず、花飾りもしくは鉢植えを使用するが、郊外では民家周辺や農地の脇にマリーゴールドの植栽が見られた。また、野生化したマリーゴールドも広範囲に見られ、外来種ではあるが、宗教的活動と結びついた結果、マリーゴールドが景観を構成する重要な植物の1つであることを確認した。 得られた情報を整理して形の文化会に参加して魔除けに使用される植物について成果発表をおこない情報交換するとともに、『照葉樹林文化論の現代的展開Ⅱ』、(山口裕文編)の「東南アジアの少数民族におけるタケ造りの魔除け「鬼の目」の多様性」の部分について執筆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度は中国とタイにおける現地調査を予定していたが、両国ともに政情の悪化により、現地調査の安全性の確保が難しいと判断したため急遽調査を見送ることとなった。これらに代わり、東ネパールでの現地調査を行った。ネパールでは日々の暮らしと宗教が深く結びつき、調査地として適しており問題はない。ティハール祭に参加し、外来種のマリーゴールドが大量に利用されている事実を確認し、その栽培状況も調査できた。祭祀活動に伴う植物利用が、地域の景観形成に寄与するという一例を確認できたため、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度行えなかった中国およびタイでの現地調査を行い、タイ北部のアカ・ラフ族の集落で確認したワタと同様、同民族が暮らす中国雲南省におけるワタと祭祀利用、および集落でのワタの栽培の実態を確認して研究の精度を高め、少数民族の所持するタケ類やワタの祭祀活動との関係についてこれまで収集した情報を整理して関連学会で成果発表する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
26年度に予定されていたタイおよび中国における現地調査が政情不安のために実施できず、研究費の一部を次年度に繰り越したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
27年度は繰り越した予算と併せてタイ北部ならびに中国雲南省での現地調査を行い、論文執筆のための英文校閲費等の予算、学会発表に関わる経費を計上する。
|