研究課題/領域番号 |
26760010
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
日下部 尚徳 大妻女子大学, 文学部, 講師 (60636976)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自然災害 / サイクロン / 復興 / バングラデシュ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、バングラデシュのサイクロン常襲地域において、住民が被災後に抱える生活再建課題と、課題への対応態様について、定性的及び定量的データを収集し、災害高リスク地域における災害復興課題を住民の視座から明らかにすることにある。 2014年度は、8月および2-3月にかけて、サイクロンによる被災状況と生活再建課題を明らかにするため、シャトキラ県において現地調査をおこなった。同県は、2009年のサイクロン「アイラ」によって被災しており、一部地域で破堤した防潮堤が修復されていないことから、復興の度合いが低い地域である。また、アイラの被災地域では、被災直後から長期間にわたり高潮の水が引かない状況が続いた。そのため、住民の多くがシェルター、友人宅、堤防の上で避難生活をおくることとなった。高潮による浸水で農地が使えなくなった住民も多く、同地域での生活を諦め、堤防の外に移住した住民も多数存在する。 被調査者の選定にあたっては、すでに被災後に他地域に移り住んでしまった住民も多く、被災地域における被災者リストを作成し無作為調査を実施することが困難であったことから、被災以前から同じ地域に住む住民を現地で探しだし、任意抽出せざるをえなかった。そのため、量的調査に関しては生活再建課題の傾向をさぐるにとどまった。 調査から、NGO や国連機関が実施するCash for WorkやFood for Workのほか、不定期に実施される日雇い労働に参加して生計をたてる住民が多いことが明らかになった。これにより、防潮堤などの復興は進んだが、人びとはいつまでも続くわけではないこれらのプログラムに自らの生計を委ね、今後の生活の糧になる田畑での仕事や、魚漁の仕事に戻らなくなるという問題も顕在化していた。荒れたままで放置された田畑や、放置された漁船の残骸などがアイラの被災地地域においてはいまだにみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度現地調査実施期間において、政治的対立からバングラデシュの治安情勢が大きく悪化した。そのため被災地域においても、全国ゼネストやイスラム主義勢力による暴動がおきたため、渡航の延期や調査期間の縮小を余儀なくされた。今後、治安情勢の改善を待った上で比較対象地域を広げ、調査項目を拡充することにより研究の充実を図りたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
フィールドワークの2年度目には、8-9月および2-3月にかけて、2村の調査をおこなう。一つ目は、沿岸部のバゲルハット県に位置する村で、2007年のサイクロン「シドル」によって被災した経験を持つ地域である。同サイクロンにおいては、被災直後から国際支援が集中したため、復興の程度は比較的高い地域であると言える。もう一カ所は、南部ノアカリ県ハティア島アスカバジャール周辺に位置する村である。アスカバジャールは、ダッカから船で18時間のところにあるハティア島に位置する漁村地域である。ハティア島は、バングラデシュ全土で14万人が亡くなった1991年のサイクロンで壊滅的被害を受けた。ハティア島の中でも僻地(島中心地からバスと徒歩で2時間程度)に位置するアスカバジャールの貧困の度合いは高く、1991年以降もサイクロンによる人的・物的被害が発生していることから、貧困層が抱える長期的な生活再建課題を研究できる社会的環境にある。調査には前年度と同様の調査票を用い、調査結果の地域間比較検討をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査実施期間において、政治的対立からバングラデシュの治安情勢が大きく悪化した。そのため、被災地域においても全国ゼネストやイスラム主義勢力による暴動がおきたため、渡航の延期や調査期間の縮小を余儀なくされたことから、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度予定している調査の実施期間を延長し、現地で雇用予定の調査補助者を拡充することにより、次年度使用額を使用することを計画している。
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